国内最大規模を誇る総合大学の根幹を揺るがす事態である。

 東京地検特捜部が、日本大の医学部付属板橋病院(東京都)建て替え工事の設計契約を巡り、理事の井ノ口忠男容疑者と医療法人「錦秀会」(大阪市)前理事長の籔本雅巳容疑者を、背任の疑いで逮捕した。

 井ノ口理事が役員を務める日大の関連会社「日本大学事業部」は、設計契約の業務委託を受けて選定した設計事務所に着手金を送金した。容疑は、このうち2億2千万円が、籔本容疑者の出資する実体のないコンサルタント会社に支出され、日大に損害を与えたというものだ。

 関係者によると、井ノ口理事らは、不正はないなどと主張しているそうだ。

 しかし特捜部は、設計事務所を選ぶ際に評価点の改ざんがあり、コンサル会社から複数の会社を経由して井ノ口理事に2千万円超が渡り、籔本容疑者も約1億円を受け取ったことなどを、つかんでいるとみられる。

 事実だとすると、主に学生の納めた授業料によって、公正に運営されるはずの大学が、「暗部」を抱えていることになろう。

 事業部は、日大の全額出資で設立され、学部単位の物品購入や管理業務、食堂の運営などを一括して行い、コスト削減を図る。得られた収益の一部を、日大本体に還元する仕組みもある。

 設立後、井ノ口理事は調達などを一手に担うようになり、業務の規模を拡大していったという。その功績により、4年前に日大の理事にも就任した。

 コーチを務めていたアメリカンフットボール部で悪質タックル問題が起き、いったん役職を辞任したが、その後、復帰した。

 学内の要職に就けたのは、田中英寿理事長の信頼が厚いからだと指摘されている。

 特捜部は、両容疑者を逮捕した7日、関係先として田中氏の自宅を、9月に続き捜索した。トップの関与も、視野に入れているのだろう。

 事件の全容を解明するために、全力を尽くしてもらいたい。

 日大は16の学部を擁し、大学の学生数は約6万6千人、教職員は約7千人に上る。昨年、交付された国の補助金は、約90億円に達した。一部関係者による大学の私物化は到底、許されない。

 日大には、事件についての説明責任を果たし、厳正に対処することが求められる。国も、監督責任を問われそうだ。