岸田文雄首相の所信表明に対する各党の代表質問が始まった。

 新政権の姿勢をただすとともに、19日公示予定の衆院選直前の論戦の場として、与野党が対決をアピールした。

 ただ、最大野党・立憲民主党の枝野幸男代表の問いに対する岸田氏の答弁は具体性に欠けた。

 議論が深まったとはいえない。

 最重要課題である新型コロナウイルス対策で、枝野氏は具体的な水際対策や事業者への補償などについて見解を求めた。

 これに対し、岸田氏は病床や医療人材の確保、在宅療養者への対応などを挙げたが、具体策については示さなかった。

 感染再拡大に備えた対応策の全体像についても、関係閣僚に指示したと述べただけで、いつまでに示すか言及しなかった。

 アベノミクスについて、枝野氏は消費を冷え込ませたと指摘したが、岸田氏は国内総生産(GDP)を高め雇用を生み出したと評価した。

 後退した感があったのは、株式売却益をはじめとする金融所得への増税検討を先送りすると表明したことだ。

 自民党総裁選では、格差是正を目指す分配政策として意欲を示していたが、「賃上げに向けた税制強化など、まず取り組むべきことがある」と述べ、軌道修正を図った。

 衆院選を前に、国民や企業の負担となるような議論を避けたとの印象がぬぐえない。

 森友学園や桜を見る会など、政治とカネを巡る質問には、ほとんど取り合わなかった。

 党幹事長に起用した甘利明氏の現金授受問題については、国会の政治倫理審査会への出席を促すよう求められたが、「説明責任の在り方は政治家自身が判断すべきだ」と述べるにとどめた。

 国民の疑念を取り除くことができたとは言い難い。

 「信頼と共感が得られる政治」を掲げている以上、改めて調査、検証が必要ではないか。

 枝野氏は、「1億総中流社会」の復活を打ち出し、生活困窮者への給付金支給や消費税減税、最低賃金の引き上げなど、これまでに示してきた党の政権公約を改めて訴えた。

 だが、中間層の拡大に主眼を置く岸田氏の方針との違いは分かりにくいままだ。

 衆院選に向け、対立軸をどう明確化するのか。野党にも課題が突きつけられている。