ウイルスを媒介することがあるマダニ(写真はフタトゲチマダニ)=前田秋彦教授提供

ウイルスを媒介することがあるマダニ(写真はフタトゲチマダニ)=前田秋彦教授提供

国立感染症研究所ホームページ「マダニ対策、今できること」より。市販の虫よけ剤もマダニの付着を減らすが、完全に防ぐわけではない

国立感染症研究所ホームページ「マダニ対策、今できること」より。市販の虫よけ剤もマダニの付着を減らすが、完全に防ぐわけではない

 マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)の感染者が今年、京都と滋賀で相次いで確認された。山中や草むらなどにいるマダニが人から吸血する際にウイルスをうつして起こる感染症で、発熱や嘔吐(おうと)などの症状を発し、死に至ることもある。秋の行楽シーズンを迎え、肌の露出を避けるなどの予防策を講じるよう専門家が呼び掛けている。

 京都府によると、6月に府北部で60代女性が発症した。女性は一時意識不明となったが、その後回復、現在は退院している。発症の10日ほど前に草刈りをしており、耳の後ろにかまれた跡があった。

 また大津市によると、9月に70代女性の感染が報告され、現在も入院中。

 SFTSは、感染から6日から2週間後に発症。発熱や頭痛、嘔吐、筋肉痛など風邪と似たような症状があり、悪化すると血小板の減少に伴う出血や肝機能障害に至る。

 国立感染症研究所によると、ウイルスを媒介するマダニの生息エリアと重なる西日本を中心に、2013年以降、全国で641人(7月下旬現在、うち京都府8人、滋賀県2人)が感染。12%にあたる80人の死亡が報告されている。

 マダニは春から秋にかけて活動が盛んだが、冬も油断はできない。獣医師でウイルス学が専門の前田秋彦・京都産業大教授は、森林や草むら、やぶに入るときには、長袖・長ズボンで、手袋を着けたり首にタオルを巻いたりするなどして肌の露出を避けることが必要という。

 マダニは背中や脇の下、太ももの付け根など皮膚の柔らかい場所に移動してから吸血する。付着から吸血までに数時間かかることが多いことから、帰宅時に屋外で衣類を上から手で払った上で玄関で脱ぎ、すぐ入浴する。

 吸血されても痛みやかゆみはないが、血液で体長2~5ミリのマダニが大きなほくろに見えるほど膨らむ。しかし、マダニを見つけても、手で取ったり、つぶしたりすると、マダニの体液が人の体内に逆流する恐れがある。グリースなど粘度の高い液体をかけて窒息させ、自然に取れるようにする。その後、気になる症状が出てきたら早めに受診する。

 これまで農作業や山菜採りなどでの高齢者の感染が多かったとみられるが、野外キャンプの人気の高まりで若い世代も注意が必要と前田教授は指摘する。「マダニが必ずウイルスを保有しているわけでなく過度に恐れる必要はないが、予防策はぜひ講じてほしい」