今年のノーベル平和賞が、強権政治に抗した報道を続けるロシアとフィリピンのジャーナリスト2人に贈られることになった。

 「報道の自由」は、民主主義と平和の基礎である。2人は圧政下で「表現の自由を守る努力をしてきた」というのが授賞の理由だ。

 いま世界で強権支配が広がり、言論への弾圧が強まっていることへの警鐘といえる。

 平和賞は今年で創設120年を迎えた。報道活動への授与は1935年、ナチスの弾圧を受けたドイツ人記者以来だ。全体主義が台頭し、第2次世界大戦へ向かう時期にも重なるほど、厳しい状況を強く訴えるものといえよう。

 ロシアの独立系新聞編集長のドミトリー・ムラトフ氏は、プーチン政権の圧力に屈せず調査報道を展開している。同紙では、チェチェン紛争下の人権侵害を告発した記者が射殺されるなど記者6人が犠牲となっている。

 フィリピンでニュースサイトを率いるマリア・レッサ氏は、容疑者殺害を容認するドゥテルテ政権の麻薬取り締まりを批判し、報復的に逮捕されても活動を続けた。

 両国にとどまらず、報道の自由は危機にさらされている。

 各国で投獄されているジャーナリストは昨年12月時点で274人に上り、1990年代前半に民間団体が集計を始めて最多という。

 政権に都合の悪い報道を「フェイク(偽)ニュース」として摘発対象とする動きが相次いでいる。

 特に中国は批判的な言論の抑え込みを強め、民主派系の香港紙「蘋果日報」(リンゴ日報)は今年6月、廃刊に追い込まれた。クーデター後のミャンマー国軍も言論弾圧を徹底している。

 言論の自由を憲法で保障している国も例外ではない。米国のトランプ前大統領は政権批判を「フェイク」と攻撃し、根拠なく大統領選結果を否定して支持者による連邦議事堂襲撃事件を招いた。

 日本も報道の自由度の低下が指摘されている。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」による各国ランキングで今年は67位。2010年は11位だったが、政府が指定した機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法が成立した13年以降、低落している。

 官庁や企業の情報隠蔽(いんぺい)、改ざんが相次ぐ一方、インターネット上には真偽不明の情報が氾濫している。事実をつかみ取って伝える重要性は増している。われわれ新聞もその使命と責任を再確認し、信頼に足る報道に一層努めたい。