福島県産などの水産品の輸出にブレーキがかからないか心配だ。

 韓国による福島や茨城など8県産の水産物輸入禁止措置を不当とした世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会の判断が、WTOの上級委員会によって覆された。

 東京電力福島第1原発事故による放射性物質の影響を懸念する韓国の訴えに沿った判断だ。WTOの紛争処理は「二審制」で、上級委の判断は最終審となる。

 安全性を主張してきた日本にとっては大きな打撃だ。これを機に徐々に進んできた各国の輸入規制緩和の流れが滞る恐れもある。

 韓国はすぐさま、8県産の水産物の禁輸を維持すると表明した。

 背景には悪化している対日関係もあろうが、食の安全について国際社会の厳しい受け止め方を反映していると考えるべきだろう。

 日本政府は、安全性を科学的、客観的に説明できるような材料を示していかねばならない。

 原発事故後、韓国は8県で水揚げ・加工された全水産物の輸入を禁止した。日本は2国間協議を進めたが不調に終わり、「規制は科学的根拠がない」とWTOに提訴した。第一審にあたる小委員会は昨年2月、輸入禁止は「必要以上に貿易制限的」として韓国にブリやサンマなど28魚種の禁輸解除を促したが、韓国が上訴していた。

 事故から8年余りがたち、輸入を止めていたEUや中国などは徐々に規制を緩め始めている。

 今回の判断は、そうした各国の方針に影響を与えかねない。

 日本政府は「安全性は否定されていない」(吉川貴盛農相)として、引き続き韓国に輸入禁止の撤廃を求めていくという。

 ただ、消費者が放射性物質に敏感になるのはやむを得ない。規制を緩和しようとした台湾では昨年11月、国民投票で禁輸継続の提案が成立している。海外の世論にどう訴えかけるかは難しい課題だ。

 福島県では、魚をとる範囲と種類を決め、検査を行って安全性が確認されたものだけを出荷している。こうした取り組みを、もっと具体的にアピールしてはどうか。

 各国の輸入規制が長引けば、それが風評となって日本国内での流通にも影響が出かねない。このことも十分考慮しておくべきだ。

 禁輸の起因になった福島第1原発では、タンクで保管を続けている汚染水を浄化処理して海洋放出する案が取りざたされている。

 新たな風評を招く恐れがある。処理方法の妥当性を見極めると同時に、徹底した対策が必要だ。