大きく息を吸い込み、思いっきり吐き出す。呼吸が浅いと酸素量は少ないが、深呼吸によって多くの酸素が体内に取り込まれ、ストレスの緩和効果もある▼人間の生理機能にも似た現象が毎冬、琵琶湖で起きていた。「琵琶湖の深呼吸」と呼ばれる全層循環は、春から秋にかけて酸素濃度が低下する湖底に、1年分の酸素を供給する効果がある▼大気に接し酸素をたっぷり含む表層水が、寒気に冷やされて重くなり、深い湖底へ。下層の水と混ざり合って酸素濃度が均一化されるが、今季は1979年の観測開始以降初めて完全な対流を確認できなかった▼暖冬だった2007年は全層循環が大幅に遅れ、北湖の酸素濃度が下がりイサザなどが大量死した。循環が不十分な年が重なれば湖底は貧酸素に陥る。観測を続ける滋賀県琵琶湖環境科学研究センターは、生態系への悪影響を案じる▼日本一の湖は青く深く水をたくわえ、多種多様な生き物を育んできた。だが、人間が招いた温暖化に伴い、危機が迫る。健康に見えても呼吸が乱れ気味な湖に心痛む▼湖国では1970年代、赤潮発生をきっかけに合成洗剤追放運動を展開し、住民挙げて湖の水質改善に取り組んだ。しかし、地球規模で進む変調に有効な対策を見いだせない。湖のため息が聞こえてきそうだ。