黒田夏子さん(新潮社提供)

黒田夏子さん(新潮社提供)

 女性による文学作品に贈られる「第31回紫式部文学賞」が、芥川賞作家・黒田夏子さん(84)の小説集「組曲 わすれこうじ」(新潮社)に決まった。主催する京都府宇治市と同市教育委員会が13日、発表した。

 同市が源氏物語の舞台であることにちなんだ賞で、今回は2020年に刊行された55作品が出版社などから推薦された。受賞作は、早くに両親を失った語り手が戦後、海岸の別荘で親族に引き取られて暮らすなどした幼年の記憶を独特の言葉のリズムでたどる。

 受賞作発表の記者会見で、国際日本文化研究センター名誉教授の鈴木貞美・選考委員長は「詩にも似て、言葉のワザを楽しむ作品」と講評。横書きだがカタカナを使わず、動植物の名称も和語で柔らかく説明しつつ、飼い犬を「愛玩獣」などと役割で呼び、一人称「私」を用いずに場面ごとに「成育途上者」「想起者」などと規定しているといい、「挑戦的で画期的な作品」と述べた。

 黒田さんは「千年前と飛び抜けて古い時代の先達の名前を関した文学賞を授けていただき、大きな文学史の流れの中に呼び込んでいただけたようで光栄」とコメントを寄せた。

 黒田さんは東京都出身で、早稲田大卒。校正者などとして働きながら執筆を続け、2013年に「abさんご」で芥川賞を受賞した。

 市民の文学作品を対象にした「第31回紫式部市民文化賞」は、同市宇治の上田邦夫さん(67)の回顧録「屋根裏から出囃子が聞こえる〈地域寄席奮闘記〉」に決まった。紫式部文学賞などの贈呈式は11月7日、同市文化会館である。