保釈した刑事被告人に逃亡防止策としてGPS(衛星利用測位システム)を装着できるようにする制度案を、法制審議会の部会がまとめた。

 欧米で行われているとはいえ、保釈中のGPS装着は行き過ぎた人権制限になりかねない。そもそも、刑が確定する前の被告は推定無罪であることを忘れてはならない。

 日本では逮捕段階から自白を得るまで長期勾留する傾向があり、「人質司法」と国内外から批判されている。GPS導入よりも人質司法の解消が先決ではないか。

 議論のきっかけとなったのは、2019年に起きた日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告のレバノン逃亡事件だ。大阪や神奈川などでも逃亡が相次いだことから、昨年2月に法相が逃亡防止策を審議会に諮問していた。

 議論の中で焦点の一つとなったのがGPS装着だ。委員からは「生活全般を監視し得る」と制限の行き過ぎを懸念する声が出た。しかし、導入自体に反対の意見はなく、GPS装着の対象範囲を巡る議論となったようだ。

 日弁連も意見書で、あくまで人質司法の解消を前提に、身体拘束の代替として必要最小限にすべきとした。

 こうした中で、部会のまとめ案はGPS装着を海外逃亡の防止に限定した。空港などに所在禁止区域を設定し、区域に立ち入ると裁判所に送信される仕組みだ。無断で取り外せば1年以下の懲役となる。

 ただ、海外逃亡の恐れがあるのを、どう見極めるのか。疑問が残る。

 公判での供述を重視する裁判員裁判が進んだことを背景に、裁判所はより保釈を認める方向に変化しているようにみえる。保釈率は09年に15・6%だったのが20年には31・9%に上昇している。

 GPS装着を広げれば、さらに保釈が増えると期待する声もある。一方で、逃亡しそうにない被告まで装着されかねないとの懸念も聞かれる。GPS導入の効果は見通せない。

 部会案では、二審出廷の義務化や逃亡罪の対象拡大、法定刑の厳罰化なども盛り込まれた。近く開かれる審議会総会に答申されるが、刑事訴訟法などの改正に向け、さらに議論が欠かせない。

 欧米や韓国などはGPS装着を実施しているが、日本に差し迫った必要性はあるだろうか。むしろ長期勾留の問題を検証し、議論を深めることが重要だ。