各国の指導者や富豪らの課税逃れの疑惑がまたも明るみに出た。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した新資料「パンドラ文書」に基づく取材で、世界の現旧首脳35人がタックスヘイブン(租税回避地)に設立した法人や財団を使い、巨額の不動産を保有するなど、不透明な取引に関与していたことが分かった。

 中には、富裕層への課税強化を求めた英国のブレア元首相や、全公職者の資産公開の必要性を主張していたケニアのケニヤッタ大統領も含まれている。

 限られた政治家や富裕層だけが利用できる「抜け道」を使い、知られたくない蓄財を隠し、税逃れをすることは許されない。

 関係国では、捜査当局などが疑惑の追及を始めている。実態の解明を進めてほしい。

 資料は、回避地での法人登記・管理を手掛けるパナマやシンガポールの法律事務所や信託会社など14業者の内部文書で、1190万件にのぼる。

 回避地とのつながりが判明した政治家や政府高官は、91カ国・地域の330人以上になる。

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長や内閣官房東京五輪・パラリンピック推進本部事務局長を務めた平田竹男氏をはじめ、千を超える日本の企業や個人の記載もある。

 回避地での経済活動自体は違法ではない。問題は、そうした国や地域は税率が極端に低く、企業情報や取引などの秘匿性が高い点だ。資産運用で利益が出ても税務当局の目が届きにくい。

 回避地の利用で蓄財を指南する弁護士や会計士の実態も明らかになっており、高額な手数料が介在しているとされる。

 世界の国々では、課税を回避する富裕層や企業によって年間4270億ドル(約47兆円)の税収を失っているという調査結果もある。

 税金は、各国とも福祉や教育、公共投資など、暮らしや社会を支える重要な財源だ。

 一部の資産家や企業が租税回避で富を増幅させれば、税の公平性を損なう。国民の不公平感が高まり、国家の財政に対する信頼を失いかねない。

 ICIJによる「パナマ文書」「パラダイス文書」の暴露をきっかけに、2017年から各国の税務当局間で、非居住者の金融口座情報を交換する制度が行われている。さらに情報共有を進め、不正の監視や摘発に各国が結束して取り組むべきだ。