東京の企業が移転してきたり、東京以外の既存施設を拡充したりするのは、地方にとって歓迎したいことである。

 雇用が増え、人口の流出に歯止めがかかるかもしれない。自治体の税収も増えるだろう。

 移転などを強く後押しする優遇税制は、一極集中を是正し、「地方創生」につなげる政府の主要施策といえよう。地方の期待も、高まっていた。

 ところが、創設された2015年度からの3年間に、企業がこの制度を利用したのは、わずか74件にとどまっていたことが、先日分かった。

 20年までに7500件の移転・拡充を目指す政府の目標には、ほど遠い。

 どうして、見込み違いが起きたのか。制度を見直す必要が、あるようだ。

 優遇税制は、企業が事務所や研究所、研修所を、東京23区から地方に移すか、すでに地方に立地している施設を拡充すれば、設備投資の額や雇用数に応じて、法人税を軽くする。

 その額は、移転の場合は投資費用の7%、拡充では4%となっている。企業にとっても、それなりのメリットが存在する。

 一方で、現行制度では、オフィスを新増築しないと、設備投資と認められない。施設を借りたり、室内の改装やインターネットの環境整備をしたりするのは、含まれない。

 しかも、対象となるのは、原則として2千万円以上の投資との要件まである。

 これでは、制度を利用したくても、できないケースが、あっただろう。

 本年度末に期限を迎える優遇税制について、地方側を代表する全国知事会は、来年度以降も継続したうえで、軽減額の拡大を検討すべきと、政府に提言している。

 政府側も来年度税制改正で、2年間の延長と、施設の賃借も認めるなどのてこ入れをする方針だという。できる限り、使い勝手のよい制度としてもらいたい。

 ただ、企業の移転は、社員の転居や新規採用を伴うため、「減税だけでは、コストが見合わない」との指摘がある。

 物流や情報などのインフラを整えて、企業が移転しやすい状況を、地方が備えておくことも必要だろう。

 この際、地方創生に関する政策パッケージ全体を、見直してもよいのではないか。