「もはや教育現場の実情に適合していない」との指摘は実に痛烈だ。時間外勤務手当を支給しない教職員給与特別措置法(給特法)への司法の警鐘と受け止めたい。

 労働基準法が定める残業代を支払わないのは違法だとして、埼玉県の公立小教諭が県を相手取った訴訟で、さいたま地裁が判決を言い渡した。判決は教諭の勤務状況に照らして請求を棄却する一方、職場の実態に合わない現行制度を指弾した。教員の多忙化が問題視される中、「教育現場の勤務環境改善を切に望む」と付言し、給特法に疑義を呈したと言える。

 1971年制定の給特法は、公立学校の教員には校外実習と学校行事、職員会議、災害対応の「超勤4項目」を除き、時間外労働を命じられないと規定。基本給に一律4%の「教職調整額」を上乗せする代わりに時間外や休日の勤務手当は支給しないとしている。

 残業が月平均8時間だった法制定時とは異なり、いじめへの対応や学力向上、情報教育など教員の業務は増え続け、想定を超える超勤が発生しがちという。

 文部科学省の教員勤務実態調査(2016年度)では、週60時間以上働いている教諭の割合が小学校で33%、中学校では57%に上った。月に換算すると、「過労死ライン」と言われる月80時間以上の残業時間に相当し、それを上回る教員が少なくなかった。

 政府は19年に成立した改正給特法で、勤務時間を年単位で調整して休日をまとめて取得できる「変形労働時間制」を導入した。だが残業時間を抑制する意識を希薄にしているとされる調整額制度の見直しには踏み込まなかった。これが「サービス残業の温床」になっているとの声もある。

 文科省は改めて教員の勤務実態について調査する方針だが、労務管理システムの整備や給特法を含めた給与体系の改定など、制度の在り方を早急に見直すべきだ。

 そもそも働き過ぎが常態化し、教育現場が疲弊する現状は看過できない。

 文科省は19年1月、公立校教員の残業の上限を原則「月45時間、年360時間」とする指針を策定した。教員の働き方改革の機運が高まり、部活動の負担軽減など少しずつ成果が出始めている。とはいえ、膨れ上がった仕事を減らす具体策もないまま残業の削減を求められ、「机上の空論」との批判は根強いままだ。

 小手先ではなく、教員の大幅増員や外部人材の活用といった抜本的な対策が欠かせない。