衆参の国政選挙で連勝を重ねた安倍政権では、官邸が党に対して強い「政高党低」が鮮明となった。だが数の「おごり」は問題を引き起こす。森友学園問題での財務省による公文書改ざん、「桜を見る会」を巡る問題で度重なった首相の虚偽答弁…。支持率は下降し、昨年8月、新型コロナ感染拡大のさなかに「体調不良」を理由に政権を投げ出した。「安倍政権の継承」を掲げた菅前首相も早々につまずく。

■「差し控える」

 「会員に入っていません」。昨年9月末、刑事法を専門とする立命館大大学院の松宮孝明教授(63)のもとに日本学術会議の事務局員から連絡があった。電話口から困惑が伝わる。「とんでもないことが起きた」と直感した。

 会員の改選では、同会議が推薦した候補を首相が任命すると、法は定める。しかし、松宮氏ら6人が外された。菅前首相は国会で「人事のことであり、答弁を差し控える」との発言を連発。後に、歴代最長の在職日数となる官僚事務方トップの杉田和博前官房副長官が主導したとされた。

 過去の政府見解でも首相の任命拒否は否定されており、官僚が事前に調整することは前代未聞。松宮氏は「行政権を無視した明らかな法律違反。やましいことをしたから説明できなかったのでしょう」。国民の支持を失い、わずか1年で幕を閉じた菅政権に冷ややかな視線を送る。

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 岸田文雄首相が衆院を解散し、4年ぶりの衆院選(19日公示、31日投開票)が行われる。与党の圧倒的な数の力で在任歴代最長となった安倍元首相と路線を継承した菅前首相の政権運営は、今月初旬まで9年近くにも及んだ。「安倍・菅政治」がもたらした変化や問われるべき課題を京都、滋賀から見つめる。