伝統的なかやぶき屋根が残る集落。観光客の人気を集める一方、地域は人口減少が続いている(6日、京都府南丹市美山町北)

伝統的なかやぶき屋根が残る集落。観光客の人気を集める一方、地域は人口減少が続いている(6日、京都府南丹市美山町北)

2年ぶりに再開した東近江市愛東地区唯一のスーパー。住民有志が会社を立ち上げて運営している=15日、同市

2年ぶりに再開した東近江市愛東地区唯一のスーパー。住民有志が会社を立ち上げて運営している=15日、同市

 京都府南丹市美山町北で区長を務める男性(62)は3年前、実家のある同区へ約40年ぶりに戻り、窯焼きピザの店を開いた。山間地の一帯は静かだった子どもの頃と異なり、伝統的なかやぶき屋根の家屋が残る「かやぶきの里」として国内外からの観光客でにぎわっていた。一方で暮らす住民らの活力は失われつつあると感じた。

■廃止・撤退

 「地域にとって大変なことが起きている」。当時、町内唯一の常勤医がいる診療所が廃止の危機にひんしていた。診療所を長年切り盛りしてきた医師が高齢で退職するに当たり、後任の確保が難航。人材不足に加え、人口減少に伴う経営環境の悪化も背景にあった。

 男性は近隣の集落を見渡し「移住者が入ってきたものの、以前と比べ若者の数が格段に少なくなった」と感じる。近年、小学校が統廃合したり、銀行の支店が町内から撤退したりと、地域の疲弊を表す出来事が相次いでいた。

■お仕着せ

 「地域の再生のために全力を尽くす」。安倍晋三政権が「地方創生」と銘打ち、東京一極集中の打破と人口減少対策に本腰を上げたのは2014年。翌年に統一地方選を控えていた。

 各自治体は、国の交付金を獲得するため、人口増加や維持につながる5カ年計画の策定を求められた。「霞が関が望む青写真を示し、カネを取りに行く中央集権的なお仕着せを感じた。新規事業のため、継続的な取り組みが寸断された面もある」と京都府内の自治体幹部は振り返る。

 それから7年。東京への人口流入や少子化の傾向は変わらず、京都府では人口が約4万8千人も減少した。安倍元首相は昨年8月の辞任表明会見で「歯止めはかけられてない」と認めざるを得なかった。

 地方創生は、その後に打ち上げられた「女性活躍」「1億総活躍」「働き方改革」など次々と変わる看板政策に埋もれた。新たに就任した岸田文雄首相は地方政策として「デジタル田園都市国家構想」を掲げる。

 美山町の診療所問題は南丹市が介入し、今春に公設民営から市直営に切り替えて存続した。