運転席後側の右側最前席。封鎖はされていないが、混雑時以外の使用を控えるよう呼び掛けている(京都市右京区)

運転席後側の右側最前席。封鎖はされていないが、混雑時以外の使用を控えるよう呼び掛けている(京都市右京区)

混雑時は席を使用しないよう求める市バス車内の張り紙。右側最前席の窓に貼られている

混雑時は席を使用しないよう求める市バス車内の張り紙。右側最前席の窓に貼られている

主なバス会社の対応

主なバス会社の対応

 子どものころ、バスの最前席に座るのを楽しみにしていた人も多いのではないか。コロナ禍で運転手の感染防止を目的に最前席を使用禁止にするバスが増える中、京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に、京都市バスで発生した乗客間トラブルへの相談が寄せられた。

 相談者は中京区の40代女性。昨春の緊急事態宣言中、息子(8)の通院のためバスに乗り、運転席背後の右側最前席に座らせた。席には「混雑していないときは、ご利用をお控えください」との張り紙があったが、他の座席は空いていなかった。しばらくすると、年配女性から「座るなと書いてあるのが見えないのか」と怒鳴られた、という。

 女性は「息子は自閉スペクトラム症で、外見では分からない。遊びに出掛けると思われたのか」と嘆く。「乗客数はバス停ごとに変わり、空席が出れば移動しなければいけないのか。でも降車まで席を立たないでとのアナウンスも流れるし…」と戸惑い、「『混雑』という言葉の解釈は人によって異なり、あいまいな表現では混乱する。感染の恐れがあるなら禁止すればいいのに、なぜこんな表示なのか。調べてほしい」と依頼された。

 市交通局に聞くと、「乗客の安全と運転手の感染予防を両立させるため」という。当初は運転席を透明のカーテンでL字形に囲い、座席の使用禁止を回避しようとしたが、光の反射で前方が見えにくくなったり、ミラーで車内の様子が見えなくなったりする課題が出て断念した。昨年4月からドア付近の左側最前席を封鎖している。

 右側最前席も運転手から「禁止すべき」との声が上がったが、同局は立つ乗客が多くなると、急ブレーキ時などの安全面に問題があると判断した。運転席との間にビニールで仕切りを設ける一方、混雑時以外は座らないよう、乗客にお願いすることになったという。

 張り紙の「混雑」に基準はあるのか。担当者は「明確な定義はない。お客様の判断に任せている」とのこと。ただ「同様の意見は複数寄せられ、表示をどうするか、見直しを検討したい」という。

 他のバス会社に聞くと、使用禁止にする席の位置はバラバラだった。両側の最前席を封鎖したり、京都市バスとは逆に左側は使用可、右側を禁止したりするところもある。

 右側最前席は多くのバス会社でも運転席との間をビニールなどで仕切っていたが、「効果が一定ある」(阪急バス)と客の使用を認めるバスと、「完全にウイルスを防げない」(大阪シティバス)と禁止するところに分かれた。ただ感染防止の明確な根拠がある訳ではないようで、どこまで対策をとれば良いのか、悩んでいた。

 京都市交通局によると、運転手の欠勤率が15%を超えるとダイヤ通りの運行が難しくなる。コロナの「第5波」では1日最大18人が業務できず、一時、欠勤率が10%を超える営業所もあったという。安定運行に運転手の感染対策は不可欠だが、張り紙がトラブルの原因となったのも事実。乗客に混乱と対立を生まないよう改善が必要だろう。