重大な危険性を認識しながら、行政が十分な対策を講じてこなかった経緯が明らかになってきた。

 静岡県熱海市で7月に起きた大規模土石流災害で、起点となった土地での不適切な盛り土を問題視した市が10年前に、県の条例に基づく措置命令や停止命令の発令を検討しながら、最終的に見送っていたことが、県が公表した行政文書で分かった。

 「住民の生命に危険を及ぼす」とする文書をまとめながら、強い措置を講じていなかった。会見した斉藤栄市長が述べた「人災としての側面も否定できない」という言葉は重い。

 県は内部検証結果をまとめ、第三者委員会に諮るとしている。一連の手続きや対応が適切だったのかしっかり検証してほしい。

 公表文書などによると、起点の土地は2006年に不動産管理会社(清算)が取得し、盛り土に木くずを埋めるなど問題行為を繰り返していた。県と市は10~11年にかけ協議で土砂崩落の危険性を共有し、命令が必要との認識で一致していたが、発令を見送った。

 同社が不十分ながら防災工事を実施したことなどが理由という。工事は2カ月で中止されて完成しておらず、不可解な対応だ。

 複数の市OBによると、同社の幹部らは市職員をどう喝したり、連絡が途絶えたりすることがあったという。起点周辺には生活用水をためる市の受水槽があり、命令を出すと使用停止を求められる懸念もあったとみられる。

 それでも、結果的に手抜き工事を見逃し、土砂崩落の危険性を軽視していたことになる。対応が甘かったと言わざるを得ない。

 県の対応にも問題がある。

 約10年前から数度にわたり現場で崩落が起きていたことを把握し、16年以降、約50回にわたる現場調査を行っていたが、不法投棄の確認が主だった。

 土石流発生3日前にも担当者が現場を訪れていたのに、「状況に変化なし」の判断にとどまったのは残念だ。盛り土の問題は庁内で十分共有されていたのだろうか。

 建設残土を使った盛り土の崩落は、京都や滋賀でも起きており、全国的な問題だ。盛り土自体を規制する法律はなく、各都府県は独自の条例で規制するが、内容にはばらつきがあり罰則も軽い。

 甚大な災害要因となることを重く受け止め、国は統一した残土規制の法制化を早急に検討するとともに、各自治体も責任ある対応が求められる。