「法解釈の基準」の信用が揺らぐミスが発覚した。

 最高裁の重要な司法判断を掲載する公式資料「最高裁判例集」のうち、少なくとも著名な大法廷判決12件に原本とは異なる119カ所の誤った記載のあることが分かった。

 誤字脱字のほか、重要な部分が欠落していたり、本来の意味とは逆になったりする誤記もあった。

 判例集は、後の裁判の判決や書籍、学術論文にも引用される。一言一句、正確さが求められるのは言うまでもない。他にも誤りがないか徹底的に調査すべきだ。

 判例集は最高裁の判例委員会が編集する。一般に販売され、官公庁や大学の図書館にも置かれる。

 誤記の一例では、死刑を初めて合憲と判断した1948年の判決で、「公共の福祉に反しない限りという厳格な枠をはめているから、もし」という重要な文言が抜け落ちていた。

 国家が教育に介入することの違憲性が問われた76年の訴訟の判決では、本来の「認められる限り」が「認められない限り」と、正反対の意味となっていた。

 また、裁判所ホームページの「裁判例検索」から閲覧できる判例データでも、誤字脱字などのミスが約250件見つかった。

 いずれも原本の写し間違いや文言見落としなどケアレスミスによるとみられる。長年にわたって確認作業が不十分だったことが露呈した。経緯を検証し、信頼回復に努めなくてはならない。

 誤記は、共同通信の指摘を受けて最高裁が一部を原本と照合した結果、明らかになった。判例集全体の判例掲載数は47年以降の約8400件に上っており、他にも誤記が見つかる可能性がある。

 ただ、判決文の保存期間は50年と規定され、それより古いと照合できないケースも考えられる。

 判決の原本が公開されてこなかった点を問題視する識者もいる。

 原本が永久的に保存され、国民が自由に閲覧できる状態なら、誤記の早期発見や正確な記載にもつながるだろう。

 2年前には、全国の裁判所が重要な民事裁判の記録多数を廃棄処分していたことが問題になった。

 米国などでは多くの裁判記録が永久に保存、公開されるという。

 判決文や裁判記録は国民の知る権利に応える貴重な共有財産だ。積み重ねてきた司法判断を生かし、後世に残すためにも、最高裁は責任を再認識し、保存と公開の在り方を見直すべきではないか。