「自分でできることは、まず自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする」。コロナ禍で生活に困窮する人がさらに増加するさなかの昨年10月、菅前首相の所信表明演説は「自助の強要」だと一部に波紋を呼んだ。

 国のトップが公助を遠ざける姿勢を取れば、社会が困っている人に手を差し伸べない風潮を助長しかねない。そのしわ寄せは子どもたちに押し寄せる。

■子どもへの影響

 「学力低下や不登校、いじめには原因として貧困が隠れていることがある。寄り添う時にはそういった視点に立たないと解決しない」。子どもの居場所づくりに取り組む「こどもソーシャルワークセンター」(大津市)の幸重忠孝理事長(48)はこう指摘する。センターを利用する子どもの家庭は多くが経済的に苦しい。

 地域の団体と協力して取り組むヘアカットや居場所カフェで、さまざまな事情を抱えた子どもと接してきた。「好きで伸ばしている」と強がりを言いながらも髪を切った後、うれしそうに笑った子。必要とする人に余剰食品を配るフードバンクの食材が残っているのを見て、「仕方ないな」と嫌々を装いながらたくさん持ち帰っていく子。

 日本の子どもは7人に1人が貧困状態にあり、安倍・菅政権時代も大きく改善されていない。未来を担う子どもたちを社会でどう支えるか。「自己責任」を押し付けるだけでは、貧困の連鎖を断ち切れないと幸重さんは指摘する。

 岸田文雄首相は就任後の所信表明演説で「全世代型社会保障の構築を進める」とし、野党も充実策を訴える。人口減が進む中で財源を確保しつつ、社会の安全網をどう編み直すのか。政治は率直に語るべきだ。

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 岸田文雄首相が衆院を解散し、4年ぶりの衆院選(19日公示、31日投開票)が行われる。与党の圧倒的な数の力で在任歴代最長となった安倍元首相と路線を継承した菅前首相の政権運営は、今月初旬まで9年近くにも及んだ。「安倍・菅政治」がもたらした変化や問われるべき課題を京都、滋賀から見つめる。