天橋立に設置された、文珠水道の通行自粛を呼び掛ける看板(宮津市文珠)

天橋立に設置された、文珠水道の通行自粛を呼び掛ける看板(宮津市文珠)

マリン事業者が利用者に着用を義務づけているリストバンド。紙製だが耐久性があり、引っ張ってもなかなかちぎれない(宮津市江尻)

マリン事業者が利用者に着用を義務づけているリストバンド。紙製だが耐久性があり、引っ張ってもなかなかちぎれない(宮津市江尻)

 京都府宮津市の名勝・天橋立の水路を暴走する水上バイクを規制する自主ルールが策定され1年。市の調査では8月の土日祝に同水道を通った水上バイクは1台にとどまった。マリン事業者の意見をふまえて今春に改定した新ルールが功を奏し、風光明媚な景観と海のレジャーの両立に向けた取り組みが進んでいる。

 天橋立から離れた海上を、水上バイクが水しぶきを上げながら走っていく。市内で最も多くの利用客を抱える「マリンクラブ海族」(同市江尻)では出航時、天橋立から100メートル以上離れて航行するよう注意をしている。同クラブの足立真作さん(52)は「一部の人による迷惑行為で水上バイク全体が悪者扱いされている。事業者が啓発しないとマリンレジャーの幅が狭まってしまうという危機感がある」と話す。

 新ルールでは、出航するマリン事業ごとに色が異なるリストバンドを着用することや、騒音や水しぶきが問題となっていた天橋立南側の文珠水道の航行自粛を定める。新ルール制定後、通過する水上バイクの数は、毎日のように往来していた昨季以前と比べ大幅に減少した。

 足立さんは「利用客の7割近くが天橋立の水路を通れないと知っており、周知が進んでいる」と語る。近くで旅館を経営する幾世健史・天橋立観光協会副会長も「今年は水上バイクの音はほぼ聞かない。効果が出ている」とうなずく。

 昨年7月、地元住民や行政などによる「天橋立海面利用安全対策協議会」が天橋立周辺での徐行などを求める自主ルールを策定。しかし、ルール施行後も水上バイクへの苦情件数は変わらなかった。地元からはより厳しい対策を求める声が出た一方、マリン事業者は協議会に参加しておらず、府からルールを初めて知らされて、「決め方が一方的」「トイレや休憩のための着岸は認めてほしい」など、改善を求める意見が出ていた。

 そこで昨年10月から規制ルールの改定に向けた協議にマリン事業者も加わった。府の担当者は「事業者からは『こんなに困っている人がいるなんて知らなかった』という話も聞いた。ルール作りに参加してもらうことで、利用者にもルールが伝わる」と強調する。協議会では、マリン事業者が利用者の目線から、積極的に議論を加わった。

 関係者は、宮津湾は波が穏やかで景観もよく、海のレジャーにとって最良の観光地だと口をそろえる。幾世さんは「水上バイクの利用者にはルールを守って楽しんでもらい、共存共栄したい」と語る。一方、事業者を通さず砂浜などから降ろされる水上バイクへの対策は今後の課題で、府の担当者は「ルールの定着に向け、地域一体で取り組みたい」と話していた。