災害の危険性を不安視する今井さん。太陽光パネルの建設予定地は木々が伐採され、土がむき出しになっていた(大津市)

災害の危険性を不安視する今井さん。太陽光パネルの建設予定地は木々が伐採され、土がむき出しになっていた(大津市)

各党の政策

各党の政策

 大津市内の住宅街に6月、赤土がむき出しになった山肌が現れた。「こんな急傾斜地にメガソーラー(太陽光発電所)を設置するなんて。再生可能エネルギーと人命、どちらが重いと考えているのでしょう」。近くに住む今井俊夫さん(78)はスギやヒノキが伐採され、日差しが照りつける計画地を眺め、つぶやいた。

 脳裏をよぎるのは、2013年9月の台風18号に伴う大雨被害だ。300ミリを超える大雨が襲い、メガソーラー計画地に隣接する西側斜面で土砂崩れが発生。生活道路や住宅地に押し寄せた泥や濁水をスコップでかき出し、自然の驚異を肌で感じた。

 あれから8年。計画では約5千枚の発電パネルを設置するため、盛り土を伴う造成工事が行われる。「山の保水力が失われれば、住民が命の危機にさらされる」。今年7月に静岡県熱海市で起きた土石流被害で一層、危機感は強まった。

 計画が持ち上がった16年から反対運動を続ける。しかし、滋賀県や大津市は「土砂の流出防止対策を指導した」などと事業許可を出し、山は切り開かれた。「災害はいつ起こるか分からない」。今井さんら住民側は8月、県と市に事業許可の取り消しを求める審査請求に踏み切った。

 50年までに「温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を目指す政権にとって、再生可能エネルギーへの転換は大きな柱だ。中でも太陽光発電は東日本大震災後、電力の固定価格買い取り制度(FIT)などが追い風となり全国で急速に拡大。年間発電力量は6・7%(19年度)となり、当初の目標値(30年度に7%)に迫る。10月に改定されたエネルギー基本計画では、再生エネの割合を36~38%に拡大する目標を掲げ、うち太陽光は最大となる約15%を見込んでいる。

 一方、太陽光をはじめ、巨大な風車を伴う風力など自然エネの発電施設は環境や生態系の破壊、災害の危険性をはらむ。事業者と計画地の周辺住民が対立するケースは全国で相次ぎ、脱炭素社会の実現と防災の両立が課題だ。木津川市山城町の静かな集落にも不安が忍び寄る。

 同町神童子地区では、住民の反対で2年前に白紙撤回されたメガソーラー建設計画が昨年末、再浮上した。下流には、336人が犠牲となった南山城水害(1953年)で氾濫し、河床が平地より高い「天井川」の一つがある。周辺住民は豪雨による土石流発生を懸念する。

 同地区出身の中田忠信さん(75)=京都府精華町=は「あの日」の記憶を忘れない。当時、小学生。自宅は水につかり、目の前の道路は川のようだった。身長約180センチの父に肩車されて難を逃れたが、濁水は父の腰の高さまで迫っていたという。

 「岸田政権が唱える脱炭素は大いに賛成。ただ、なぜ危険性がある場所に設けなければならないのか」。被災経験があるからこそ、安易な山の開発には納得がいかない。