白鳩が昨年導入した最新の自動倉庫。48台のロボットが素早く商品をピックアップする(京都市伏見区)

白鳩が昨年導入した最新の自動倉庫。48台のロボットが素早く商品をピックアップする(京都市伏見区)

 箱型の物体が、碁盤の目状に張り巡らされたレール上を縦横無尽に駆ける。下着通販の白鳩(京都市伏見区)は、昨年新設した本社兼物流センターに最新型の自動倉庫を導入した。素早い集荷作業を担うのは、48台のロボットだ。従業員数は変わらず、出荷能力は3割向上。IR広報室長の池上正さん(53)は「機械は速くて間違えない。人間の仕事を代替する以上の効果がある」と胸を張る。

■「この会社で働き続けますか」

 ロボットや人工知能(AI)などの先端テクノロジーが、社会に変化をもたらしている。新型コロナウイルス禍で非対面サービスやペーパーレス化など「デジタルシフト」は加速した。店員のいない「無人コンビニ」や、AIがトレーナーを担うフィットネスクラブなど、未来を先取りしたようなサービスも登場。一方、産業構造や身近な雇用に影響が出始めている。

 「この会社で働き続けますか。デジタル化に伴い、今とは違う仕事になりますが」。関西の商業施設に勤める京都府内の40代女性は今年、突然の問いかけに戸惑った。コロナ禍で来店客が大幅に減り、何らかの変化が必要とは理解していた。だが、具体的な説明はない。「先の仕事のイメージが湧かないことにも不安を感じた」と振り返る。

 感情的に辞職を言い出す人もいれば、転職への不安から職場に残りたいという同僚もいた。自身も葛藤はあったが、「人と関わる営業の仕事に愛着がある。職場が変わっても、やりたい事を続けたい」と現在は転職を検討しているという。

 創業100年を超える谷口印刷(長浜市)社長の立花丈太郎さん(57)も、従業員の雇用維持に頭を悩ませる1人だ。スマートフォンやタブレット端末の普及で、これまで経営を支えて来たチラシの大量受注は減り続けている。近年はウェブサイトなどのデザインに力を入れるが、「例えばインキの濃度の調整に優れた技を持つ職人に、いきなり『ウェブデザインをやって』と言っても難しい」。

■一部の職業に富と仕事集中か

 テクノロジーが雇用にもたらす負の影響は以前から指摘されていた。野村総合研究所(東京都)は、日本の労働人口の49%が、AIやロボットで代替可能とする試算を発表。日本総合研究所(同)はリポートで、デジタル化により、「自動車運転従事者」や「販売店員」「ビル・建物清掃員」の雇用がいずれも10万人前後減少すると予想した。AIが、翻訳や分析、要約にとどまらず、弁護士や新聞記者などの一部業務をこなす事例も出てきている。

 人口減少が進むと、10年後には650万人近い人手不足に陥るとの民間の試算もある。ただ、職業適性は個々に異なり、デジタルに精通した人材育成には時間がかかる。一部のプログラマーらに富と仕事が集中し、就労機会の格差が広がる懸念も残る。

 「何も手を打たなければ、10年後は日本でも米国並みの格差と分断が生じる」。経済産業研究所リサーチアソシエイトの岩本晃一さんは警鐘を鳴らす。デジタル化は特に、同じ作業を繰り返す「ルーティン業務」への影響が大きいといい、日本でも5年間で非正規雇用の約140万人が仕事を失うと推測する。

 岩本さんは、教育など人への投資が重要だとした上で「それでも仕事を失うケースは出る。税制改正を通じた再配分機能の強化など人為的な格差の縮小も必要だろう」と話す。

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 簡単に解きほぐせないさまざまな問題が市民の暮らしに横たわる。課題を京都、滋賀から見つめる衆院選連載「問う」の後半は、省庁縦割りではなく横断的に絡み合う二つの政治課題を、有権者の視点から考える。