一寸の命、いとおしき意匠

伊藤若冲 糸瓜群虫図 江戸中期

 虫は古来、日本人の友であり続けてきた。和歌に詠まれ、「玉虫厨子(たまむしのずし)」のように虫の美を取り込んだ作品もある。細見美術館(京都市左京区)で10月29日から始まっている特別展「虫めづる日本の美」は、日本美術における「虫」を、解剖学者で昆虫愛好家でもある養老孟司さんの視点で見せる。

養老孟司さん

平安~近代、愛好家の目で選ぶ70点

 平安後期から近代まで、養老さんが細見コレクションから昆虫にちなむ作品を選んだ。現代作品を合わせ、約70件で構成する。

 冒頭に養老さんの昆虫コレクションを展示する。黒と青の対照がきらめくホウセキゾウムシや、金色や緑、赤銅色、深い青などに輝く甲虫類は、自然の造形の精緻さを感じさせる。虫に関わる現代美術作品も併せて展示する。

ホウセキゾウムシの標本(部分) 

 ここで目を慣らして細見コレクション作品を見ると、全体の意匠の中に小さく配された虫にもすぐ目が行く。養老さんのお気に入りは「秋草虫蒔絵螺鈿(まきえらでん)小箱」(江戸前期)だ。豪華な蒔絵の秋草にトンボやチョウ、カマキリが宝石のようにはめ込まれる。

秋草虫蒔絵螺鈿小箱 蓋表 江戸前期

 「四季草花草虫図屏風(びょうぶ)」でも虫は全体の主役ではないが、トンボの羽や足などの描写の細やかさに驚く。伊藤若冲「糸瓜(へちま)群虫図」は小さな生き物への画家の愛情が伝わってくる。

四季草花草虫図屏風 右隻 江戸後期

 古い時代の作品は虫の姿も意匠的だが、時代が下がるにつれて実態に近くなる。博物学が流行し、科学的な視点が生まれた影響もあるだろう。日本人が自然を見る目の確かさと、小さなものを愛する心が堪能できる。一部展示替えあり。

住吉如慶 きりぎりす絵巻 上巻(部分) 江戸前期
住吉如慶 きりぎりす絵巻 下巻(部分) 江戸前期


【会期】10月29日(金)~2022年1月23日(日)月曜(祝日の場合は翌火曜)と年末年始(12月27日~22年1月4日)休館
【開館時間】午前10時~午後5時(入館は閉館30分前)
【会場】細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町)075(752)5555
【入館料】一般1300円、学生1000円
【監 修】養老孟司(東京大名誉教授、京都国際マンガミュージアム名誉館長)
【主催】細見美術館、京都新聞
【特別協力】有限会社養老研究所、新潮社