歌人の俵万智さんが子育てをテーマにした歌とエッセー集「たんぽぽの日々」に詠んでいる。<たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやるいつかおまえも飛んでゆくから>。いつもの散歩の情景を切り取って、味わい深い。一緒にいられる時間を「たんぽぽの日々」と名付けた▼旅立ちの季節に、親は飛び立った綿毛を見届けられない。「あとはただ、風に祈るばかり」とエッセーは結ぶ。だからこそ、子どもと過ごす時間は大切でいとおしい▼自宅で家族一緒に生活する。当たり前の日常を、福知山市の後一(ごいち)充宏さん(35)一家はかみしめる。次男尊(たける)ちゃん(3)は生後4カ月の時、心臓に大きな病気が見つかった▼大阪府内の病院で心臓移植しか道はないと告げられる。両親は海外での移植を決意し、毎週末に友人らと募金のため京都市内などに立った。家族別々の日々、病院との往復…。「助けてあげてな」。街頭の声に救われた▼支援の輪は広がり活動から1年で目標額に。2017年秋に米国での移植が実現した。この春、自宅に帰った尊ちゃんに笑顔が増えた。姉や兄も優しく見守る。「やっと家族5人で普通に生活できる。ただうれしい」と両親▼一家にとっては長い冬を乗り越えた春である。未来がかけがえのない「たんぽぽの日々」となりますように。