子どもをよく遊ばせた公園で、昔に思いをはせるシングルマザーの女性(京都市内)

子どもをよく遊ばせた公園で、昔に思いをはせるシングルマザーの女性(京都市内)

 めったに泣かない高校2年の長女が今春、京都市内の女性(49)の目の前で大粒の涙を流した。「働きながら専門学校に通うなんてできない」


 長女は友人関係の悩みなどから高校を休学している。それでもパティシエになりたいと、来年3月に退学し、専門学校に行こうと決心した。高校を卒業しないため、高卒資格が不要な夜間部を選んだ。

 ただ、シングルマザーの女性に年間約150万円になる長女の学費を支払う経済力はない。国は昨年度から低所得世帯を対象に大学や専門学校の学費を減免する制度を始めたが、中卒で入れる夜間部は対象外。結局、長女は働いて学費を稼ぎ、専門学校で学ぶ道を選んだ。夢を諦めない姿に成長を感じる一方、親として無力感も抱く。「お金さえあれば」と胸が痛んだ。

 飲食店に勤務して約10年。任される業務が増えてきた32歳の時に同僚の男性と結婚した。「仕事を辞めてほしい」との夫の要望に従い、主婦として3人の子を育てた。「自分の可能性を試したかったが、妻として家事や育児をしなければとも思った」

 育児は女性任せだった。女性は子育て中にうつ状態になり、自ら保健所に助けを求めたことがある。3人の子どもたちが小学生になったころ、夫は家族に暴力を振るうようになり、子どもの体にあざが残ることもあったという。「命が危ない」。5年前に調停離婚した。

 パートで働きながら母子4人で暮らしてきたが、新型コロナウイルス禍で生活は一変した。昨年4月の緊急事態宣言で、勤め先の商業施設は休業。今は別の職場で働くが収入は心もとない。元夫の収入が減ったとして現在、養育費の支払いも止まっている。児童扶養手当を受けるが、子ども食堂やフードバンクなど民間の支援がなければ生活は成り立たない。

 コロナ禍で経済は悪化し、その余波が立場の弱い女性に及ぶ。非正規雇用労働者の割合は54・4%と男性の2倍超(2020年内閣府調査)。育児や家事で働き方や職種の選択肢が限定され、非正規にならざるを得ない構造的課題が浮かぶ。特に母子家庭は困窮や孤立を深め、所得格差は子どもの教育の格差にもつながっている。

 長男は元夫の暴力の影響で、中学はほぼ不登校に。今春から定時制高に通い、関心がある車関係の専門学校への進学を望むが、減免対象から外れた長女を思うと金銭面の不安は拭えない。中学生の次男は勉強に意欲を持てず、夢は「フリーター」と素っ気ない。周囲と同様に塾に通わせたいが、そんな余裕はない。

 156カ国中92位―。今年、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」が公表した教育分野のジェンダーギャップ指数で、日本は先進国の中でも低いレベルに位置付けられた。特に高等教育で隔たりが大きく、女性の大学進学率は50・9%と、男性より6・8ポイント低かった。教育の男女格差は、政治や経済分野で女性進出を阻み、生涯賃金の低さにもつながっている。負の連鎖を断ち切るためにも、性別や経済状況に左右されることのない教育が求められている。