古文の授業で現代語との違いを学ぶ代表格が「を(お)かし」だろう。枕草子は<秋は夕暮れ>が良く、飛ぶ鳥の隊列が小さく見えるのが<をかし>と風情をめでた▼滑稽でおかしいのではなく、格別の趣に心引かれるさまと教わった。現代語でも「おかしい」は変だ、疑わしいの意味にも用いられる。「普通ではない」というニュアンスは相通ずるようだ▼年末を控え、今年の新語・流行語の候補が発表された。ラグビーW杯関連とともに「計画運休」「命を守る行動を」と災害続きの世情を映す言葉が並ぶ▼切迫感を強めるためだろうが、最近の避難の呼び掛けで気になるのが、災害が起きても「おかしくない状況」という言い方だ。人命に関わる被害発生も変ではない、ともすれば当然だと、受容的にも聞こえてしまう。もはや異常事態ではない、過酷な気象の時代ということか▼きょうは二十四節気の「立冬」。まだ台風の傷痕が生々しいのに、暦の上では冬に入った。北からは雪の便りも届く。被災者にとっては普通でなく、気が気でないだろう▼枕草子は<冬はつとめて(早朝)>と、冷気に包まれて凜(りん)とした風情を描いた。俳句でも、「今朝の冬」は立冬を表す季語だそうだ。冷え込みに身をすくめつつ、冬の厳しさへの覚悟、備えを思う朝である。