東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓などの16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の首脳会合が開かれ、目標としていた年内妥結を断念した。

 共同声明で2020年中の署名方針を確認したが、インドを名指しし、同国を巡る「未解決の課題」があると明記した。インドは撤退の可能性に言及している。

 各国はインドを孤立させてはならない。国内事情にも配慮して交渉につなぎ止めるべきだ。

 インドが慎重なのは、対中国で多額の貿易赤字を抱えているためだ。18年度で約536億ドル(約5兆8千億円)に上る。関税の撤廃・削減によって安価な中国製品が流入すれば、自国経済にとって打撃となりかねないと判断したようだ。

 保護主義的な立場を強めているように見えるが、成長段階にある国にとってこうした懸念は当然のことではないだろうか。

 RCEPは13年に交渉が始まった。自由競争至上主義でもなく、門戸を閉ざす保護主義でもない、すべての参加国がそれぞれの事情と主体性を尊重され、公正に恩恵を受けられる―。そんな新たな経済連携モデルを東アジアから発信することが期待されている。

 16カ国の人口は世界のほぼ半分、国内総生産(GDP)は約3割を占める。トランプ米大統領をはじめ欧米で台頭する保護主義への対抗軸として期待が高まることは一定理解もできる。

 だが参加国間には大きな経済格差があり、高いレベルの協定は難しい。

 そもそもRCEPは、提案者であるASEANの「中心性」を原則としている。

 この原点に立ち返り、各国の現実に即した交渉を進めてほしい。自由貿易一辺倒ではなく、緩やかな連携でいいはずだ。

 約20ある交渉分野のうち、関税を巡る協議では多国間交渉の難しさが浮き彫りとなった。

 インドを欠いた枠組みでは軍事・経済両面で勢いを増す中国が交渉の主導権を握ることにもなりかねないと懸念する国もある。一方、インド抜きの枠組みを求める意見も出てきている。

 16カ国の参加が前提のRCEP自体が崩壊しかねない状況だ。

 インドの貿易赤字は中国以外の国に対してもあるだろう。インド国内の政治状況も絡む。16カ国の枠組み維持を求めるなら、柔軟な対応も必要だ。