緊急時には駅係員がホームドアを手動で開くことができる(京都市中京区・京都市役所前駅)

緊急時には駅係員がホームドアを手動で開くことができる(京都市中京区・京都市役所前駅)

京都市営地下鉄の各車両に1~3台ずつ設置されている車内通報器

京都市営地下鉄の各車両に1~3台ずつ設置されている車内通報器

緊急時にホームドアを手動で開くために設置された非常ボタン(京都市中京区・京都市役所前駅)

緊急時にホームドアを手動で開くために設置された非常ボタン(京都市中京区・京都市役所前駅)

 走行中の列車内での事件が相次ぐ中、乗客の安全確保に関心が高まっている。京王線の電車内で男が乗客を刃物で刺し、車内に放火した10月31日の事件では、緊急停車した車両のドアが開かず、多くの乗客が窓から脱出する映像が衝撃を与えた。もし京都市営地下鉄で同じような事件に遭遇したらどうすればいいのか。京都市交通局に取材した。

 「まずは異常があったということを乗務員に知らせてほしい」と話すのは、交通局高速鉄道部運輸課の阿曽英明・安全運行管理官だ。市営地下鉄には1両当たり1~3台の車内通報器が設置されており、旧式のものを除き、ボタンを押すと乗務員と通話できる。阿曽さんは「乗務員へ知らせていただくことで乗客への避難誘導だけでなく、警察や消防への通報も素早く行える」と強調する。

■「安全な車両に逃げる」のが基本

 東京の京王線などで起きた列車内の事件。目の前に危険が差し迫り、避難を要する場合はどうすればいいのか。京都市営地下鉄を運行する市交通局は「安全な車両に逃げる」のが基本とする。地下鉄の駅間の走行時間は長くても2分台。緊急停車した後に危険な地下の車外に脱出するよりも次の駅に着くまで待って逃げる方が早いという。

 車両の座席下にあるふたを開けてレバーを引くと、ドアを手動で開けることも可能だが、この方法はあくまで「最終手段」という。ドアを開けると車両が加速できなくなり、次の駅に到着できなくなるほか、走行中は転落や他の列車との衝突など二次被害につながる恐れがあるためで、「係員の指示なく使用しないでほしい」という。

 駅停車後、京王線での事件のようにホームドアが開かれなければどうすればいいのだろう。市営地下鉄の烏丸線では京都、四条、烏丸御池の3駅に、東西線では全17駅にホームドアが設置されている。停車位置が一定の範囲からずれると通常の操作では開かない仕組みになっているが、乗務員や駅係員が手動で開閉できるほか、線路側にある非常ボタンを押せば乗客も開くことが可能という。

 京王線の事件ではホームドアに加え、車両のドアも開かず、乗客が窓からホームドアを乗り越えて脱出した。市営地下鉄では一部を除き、窓は上下に25~40センチ開くことができるが、市交通局高速鉄道部運輸課の阿曽英明・安全運行管理官は「窓から逃げる想定にはなっていない」とする。そもそも烏丸線の3駅に設置されているホームドアは最も高い場所で133センチだが、東西線は天井まで達して壁のようになっており、乗り越えるのは不可能。非常ボタンの存在を頭に入れておいた方がよさそうだ。

 乗客17人が重軽傷を負った京王線の事件に加え、今月8日には走行中の九州新幹線で男が液体をまいてライターで火を付ける事件も起きた。市営地下鉄では各車両の連結部近くに消火器を備え付けており、万が一の場合に使用することができる。

 度重なる事件を受け、市交通局は今月から駅構内の巡回を増やし、不審物発見時の連絡を呼び掛ける放送を流している。ただ車両内には防犯カメラはなく、刃物を使った事件を想定した緊急時の対応マニュアルもないという。

 阿曽さんは「防犯カメラは費用面の課題もあり、なかなか簡単にはいかないのが正直なところだ」と頭を悩ませる。当面はマニュアルの見直しを検討するという。