対談する瀬戸内寂聴さん(右)と平野啓一郎さん(2015年8月、京都市左京区・京都造形芸術大)

対談する瀬戸内寂聴さん(右)と平野啓一郎さん(2015年8月、京都市左京区・京都造形芸術大)

 作家として僧侶として人間の営みや幸せについて考え、執筆と発信を続けた瀬戸内寂聴さんが亡くなった。訃報を受け惜しむ声が相次いだ。

 作家の平野啓一郎さん(46)は1999年に芥川賞を受賞して以降、瀬戸内寂聴さんと文学を通じて交友を深めた。「ちょうど文学について語り合う人が減っていたからでしょうか。京都大の学生だった時から大変かわいがってもらった。お会いするたびにねだって、谷崎潤一郎や川端康成ら文学史でしか知らない人の生のエピソードを話してもらった」と振り返り、「私たちは、一人の非常に個性的な作家を亡くしたと同時に、近代文学と現代文学を結ぶ生き字引を失った」と話した。

 瀬戸内文学の特徴として「生きることに困難を抱えた女性の人生を非常に繊細な目で捉えた。男性中心になりがちな文学史にあって、雑誌『青鞜』周辺の女性たちを描いた素晴らしい評伝も残した」とし、「いま女性の社会的地位への関心が高まっているが、この問題に一貫して取り組んできた作家だった」と、その現代性を指摘した。

 行動する文学者の姿勢にも「直接的な影響を受けた」と明かす。「反戦、平和への思いは空襲で母を亡くしたという実体験に根ざしている。仲間を募らず、思い立ったら一人で行動を起こしていた」

 年に数回会って、家族ぐるみのつき合いを続けてきたが、コロナ禍で1年以上会えていなかったという。「思い返すと、いつも笑顔だった。笑顔の記憶しかない」と話した。