がんは今や「治る病気」とも言われる。ところが、治療につながる早期発見に黄信号がともっている。

 新型コロナウイルス流行に伴い、医療機関の受診をためらう人が少なくない。その結果、がん検診を受ける人が減り、早期がんの診断も減少。通常なら見つかっていたがんが見逃され、今後、死亡率の上昇が懸念されている。

 胃、大腸、肺、乳、子宮頸(けい)の五つのがんで2020年の診断数が、前年より9・2%減ったことが先頃、日本対がん協会の調査で分かった。

 診断数は計8万660件で前年より8154件少なかった。減少が目立ったのは胃がんの13・4%減。次いで大腸がん10・2%減、乳がん8・2%減などだった。とりわけ早期がんの診断数が落ち込んだという。

 がんの有病率は両年であまり差がなく、主な原因は検診控えと考えられる。自治体がコロナのワクチン接種などに追われ、がん検診にまで手が回っていなかったとも指摘される。

 受診が1~2割減れば、がんが見つからない人が全国で1万~2万人増えるとの推定もある。多くのがんは着実に進行し、診断が遅れるにつれ、大きな手術などが必要になる。

 日本肺癌(がん)学会の調査では、受診控えや検診控えで20年の肺がんの新規患者数は前年より6・6%減った。全国で8600人の診断が遅れ、治療の機会を逃した恐れがあるという。

 国内で毎年、約100万人ががんと診断される。日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる死因第1位の国民病だ。進行が早いがんもあるとはいえ、医療技術の向上や治療薬の開発などで早期に発見できれば、治る可能性が年々高まっている。

 だからこそ初期にがんを見つけ、早く治療を始めることが重要であり、その前提となるのががん検診と言えよう。

 しかし、対がん協会の道府県支部が今年上半期(1~6月)に市町村から受託したがん検診の受診者数は、昨年同期に比べれば倍増したが、コロナ前の19年同期比では17%も少なくなっているそうだ。

 がん検診は感染対策を施した上で徐々に再開されているものの、長引くコロナ禍で症状があって本来なら病院に行くべき人が受診していないケースもあるとみられる。

 国のがん対策推進基本計画は早期発見に向け、検診の受診率を50%に高める目標を掲げる。だが男性は胃がん、肺がん、大腸がんで50%前後、乳がんや子宮頸がんを含めた女性は30~40%台にとどまっている。

 がんの手術件数がコロナ禍で減少傾向にあるのも残念だ。検診や治療は決してコロナ対策上の「不要不急」には当たらない。感染を警戒して、がんへの対応が手遅れになってはならない。

 ワクチン接種が進み、コロナ感染は下火になっている。定期的に適切にがん検診を受診することが大切だ。

 国や自治体、医療機関もコロナ対策と併せ、がんの検診や治療に対する目配りを怠らないでもらいたい。