圧迫装具のサンプルを腕に装着する盛本さん。ケロイドなど皮膚の盛り上がりを予防する効果があるという(京都市内)

圧迫装具のサンプルを腕に装着する盛本さん。ケロイドなど皮膚の盛り上がりを予防する効果があるという(京都市内)

 京都市伏見区のアニメ製作会社「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオが放火されて69人の死傷者が出た事件を受け、2013年に京都府福知山市の露店爆発事故で大やけどを負った被害者の家族が、「経験した治療法を知ってほしい」との思いを京都新聞社の取材に語った。ケロイドなど皮膚が盛り上がる後遺症を抑制する特殊な圧迫装具を使用したといい、「負傷の程度で効果に差はあるかもしれないが、有効な治療法があると情報提供してもらえれば」と呼び掛けている。

 爆発事故の被害者家族会の会長を務めた盛本英靖さん(52)=京都市。妻と長男、次男が火元のベビーカステラ店から約50センチしか離れていない場所に座っており、ガソリンが引火した爆風で、妻と長男が両腕、両脚に大やけどを負った。盛本さんは京アニ放火事件の報道と接する中で、治療に関する情報がほとんどないと憂慮し、「被害者や家族に情報が伝われば」と感じていた。
 爆発事故で妻と長男は約2週間入院した。当時は愛知県に在住していたため、通院した名古屋市の中京病院で、義肢装具メーカー「ワールドブレース」(同県春日井市)の圧迫装具を薦められ、使用することになった。
 妻と長男は入浴後、処方された保湿剤を塗り、昼夜、圧迫装具を着用した生活を2年間続けた。患部の皮膚がもろい状態のとき、壁にこすれただけで出血したこともあったが、装具で防げた。妻は「当初、赤黒い患部を見るだけで精神的にかなり落ち込んだ」と振り返るが、「装具を着けていると、見た目が隠せたことで気持ちも救われ、結果としてケロイドにもならなかった」と話す。
 盛本さんは会社勤めをしながら家族を介助し、精神的に追い込まれる日々の中、偶然、圧迫装具と出合えた。「やけどの後遺症を抑えられる情報が本当に必要だった」。爆発事故では被害者家族会が結成され、治療法を情報共有し、小学生から40代の13人が圧迫装具を使ったという。
 京アニ放火事件では、京都府・京都市が相談窓口を設け、府警などが被害者支援に当たっている。盛本さんは「被害者は大変な治療や精神的なショックがあり、家族は仕事に追われるなど情報収集する余裕がない人もいる。行政機関などから、熱傷の有効な治療法について情報提供してもらえれば、救われる負傷者や家族が出てくる」と訴える。

患部圧迫でケロイド予防

 ワールドブレースが開発した圧迫装具は、血流を阻害しない適度な圧力を患部に均等に与え、紫外線を99%遮断して色素沈着を起こしにくい特性があり、ケロイドになるのを可能な限り予防できるという。
 傷に引っ付きにくい素材で脱着しやすく、義肢装具士の石井寛隆社長(53)は「ケロイドは皮膚の色素量が多い人に発生しやすく、皮下組織がどの程度まで損傷しているかで効果に差はあるが、個人の体形、ケロイドの部位に合わせてオーダーメードで作っている」と説明する。事件発生から3カ月以上がたち、石井社長は「できるだけ早く試してもらいたい」と話す。
 やけど治療に詳しく、露店爆発事故の負傷者も診察した浜松労災病院(浜松市)の鈴木茂彦病院長は「やけどは傷口が治ったように見えても、皮膚の伸縮など刺激が加わることで、ケロイドになる可能性がある。それを防ぐために圧迫装具は有効」とし、「傷口は紫外線を浴びると、シミになりやすく注意が必要。退院後、痛みが残る場合、ひきつれにつながるケースもあるので、精神的につらくても適切な治療を継続して受けてもらいたい」と強調する。