広い教室は百数十人の聴講者でほぼ埋まった。大半はシニア世代だ。SNSや日常会話で多用される日本語表現について、言語学者が話す内容にうなずき、質問の手が次々と挙がる▼今月2日、立命館大の衣笠キャンパス(京都市北区)で開かれた市民開放講座「土曜講座」。終戦直後に末川博学長が「大衆とともに学ぶことが重要だ」と提唱して始まり、この日で通算3293回となった▼開かれた大学として全国でも先駆的な事業だ。明治期に同大学の前身の勤労青年向け夜間学校を開設した中川小十郎は、多様な人が学べる機会の拡大に尽力した。その理念が受け継がれている▼大学入試の英語民間試験に関する文部科学相の「身の丈」発言は、地域間や経済面での格差を容認し、門戸を狭めかねないと大きな反発を招いた。教育再生や大学改革の名の下に、国は即戦力の人材を育成する施策に前のめりになっている▼産業界への貢献だけが大学の存在意義ではない。社会全体に「知」の果実を還元する役割を担う。里山活性化や環境保全、商店街の再生などさまざまな現場で学生は住民と知恵を絞り、汗を流している▼学園祭のシーズンを迎えた。最寄りのキャンパスへ足を運ぶ絶好の機会だ。地域社会を築くパートナーとして、もっと大学を活用したい。