春の表情は豊かだ。余韻を残して散る桜、新芽や新緑には生命の力を感じる。新社会人もその一つかもしれない▼俳人坪内稔典さんの「季語集」(岩波新書)で春の季語「新入社員」の句を見つけた。<かこまれて新入社員の顔となる>小枝恵美子。緊張した面持ちか、心配げな様子か。いずれにしても、彼ら彼女らの初々しさに先輩の顔も一時(いっとき)引き締まる▼そんな新入社員の素顔とは―。日本生産性本部(東京)の昨春のアンケートで、「働き方は人並みで十分」と答えた若者は過去最高の6割を超えた。「人並み以上」は約3割でその差が広がった。若いうちの苦労も、「好んですることはない」と思う人が増えている▼世代は違っても悩みは変わらない。この仕事に向いているのか。この職場でうまくやっていけるか。わが入社時に抱いた不安が今も最も多いと聞く▼まずは、あいさつで対人関係を築くことが第一歩であろう。スマホ世代は少々苦手かもしれないが、顔と顔を合わせる本音のコミュニケーションを大事にしたい▼「素直な心の特質は謙虚と剛健とである」。こう語ったのは、京都学派の哲学者三木清である。相手を理解するように努め、自分の心に誠実に、ということだろう。素直な心、表情との出会いは誰にとっても清々(すがすが)しく、心地よい。