子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、政府が積極的な接種勧奨を来年度にも再開することになった。

 HPVワクチンは、8年前に定期接種を始めてすぐ、体のしびれや痛みなどの症状を訴える人が相次ぎ、個別に接種案内を送る積極的勧奨を中止していた。

 国内外で有効性や安全性に関するデータが蓄積されてきたため、厚生労働省の専門部会が再開を認めた。

 最新の科学的知見に基づき、ワクチンの利益とリスクを丁寧に情報提供し、十分な理解のもと接種の判断ができる取り組みが求められる。

 子宮頸がんは、20~30代を中心に増加傾向にあり、国内で年間約1万人が診断され、3千人近くが亡くなっている。女性にとって深刻な病気の一つだ。

 厚労省は2013年4月、HPVワクチンを小学6年~高校1年の女性を対象に原則無料で受けられる定期接種とした。

 だが、接種後の体調不良の訴えから、2カ月後に積極勧奨を中止した。16年には、健康被害を訴える女性たちが国や製薬会社に損害賠償を求めて提訴し、裁判は現在も続いている。

 そうした状況から、接種率は中止前の約70%から一時1%以下にまで低下した。「予防できるはずのがんが増えてしまう」と指摘する専門家らの声が高まっていた。

 再開に転じた背景には、海外の大規模研究などの進展がある。

 スウェーデンの調査では、17歳より前に接種した女性は発症リスクが88%低下したとする研究成果が発表された。

 痛みなどの症状と接種との関係についても、国内外の研究で接種の有無によって症状の発生率に有意な差はないとされ、厚労省の専門部会も「安全性について特段の懸念は認められない」とした。

 政府は、勧奨中止の間に接種機会を逃した女性を対象に無料接種も実施する方針だ。

 勧奨再開で接種者が増加すれば、副反応などの症状を訴える事例が増える可能性もある。

 そうした人たちへの相談体制を強化するとともに、接種後の症状を診察する専門の医療機関を増やし、症状が出た人への支援を充実させることが重要だ。

 併せて、接種したかどうかにかかわらず、病気の早期発見のために定期的な検診の必要性を周知することが欠かせない。