花びら1枚崩さない

 和三盆糖を練って木型に詰め、コンと打ち出す。細部までキリッと線の立った菓子が生まれる。桜やチョウ、ひな人形。かれんな姿と優しい色は茶席や祝いの場を彩ってきた。菓子の美を支えるのが職人が手で彫った木型だ。ZENBI鍵善良房(京都市東山区)で11月20日から、展覧会「美しいお菓子の木型-手のひらの宇宙」が始まっている。

二枚型《ねじり梅》

手彫り、職人技が凝縮された100点超

 和菓子老舗鍵善良房の15代目当主でもある今西善也館長は、同館の開館前から「木型展をやりたい」と思っていた。「技術が進めば木型がなくなるのでは」という危惧があったからだ。木型職人はすでに京都にはいない。鍵善も先代から岡山の「京屋」に制作を依頼している。展覧会では、京屋と鍵善が所蔵する菓子型100点以上を3期に分けて展示する。

二枚型《鯛》
打出し型《熨斗と宝寿》

 「木型はそれ自体が美しいし、昔の菓子の凝った意匠も見せたい」と今西館長は言う。古いものでは幕末の元治元年新調と記す木型もあり、花や鳥の姿に個性が見られる。

菊寿糖
打出し型《菊寿糖》

 木型作りには意匠性とともに、菓子がきれいに外れるように作る技術も求められる。鍵善で最も古くから作っている菓子「菊寿糖」は今でも花びら1枚の崩れもない。ただ高品質な木型を作れる人は多くない。

打出し型《蓬莱山》

 近年は樹脂製の菓子型も現れている。だが、手彫りの木型は同じ菓子でも少しずつ形が違う。そのぬくもりが心地よい。「和菓子の文化を大切にしてきた京都の人にこそ見てほしい」と今西館長は話す。

二枚型《筍》
二枚型 Antoinette Poisson《HANA》2018


【会期】11月20日(土)~2022年4月3日(日)。月曜と12月30日~1月5日休館。月曜が祝日の時は開館し、翌平日が休館
【開場時間】午前10時~午後6時(入館は閉館30分前まで)
【会場】ZENBI―鍵善良房―KAGIZEN ART MUSEUM(京都市東山区祇園町南側)
【入館料】一般1000円、中高生・大学生700円、小学生以下無料
【主催】ZENBI鍵善良房、京都新聞
【特別協力】田中一史(菓子木型彫刻 京屋)
【総合プロデュース】井村優三