岸田文雄政権にとって初となる経済対策が閣議決定された。

 新型コロナウイルス禍などに対応し、財政支出は55兆7千億円と過去最大となった。

 岸田氏が力点を置く「分配政策」を柱に掲げ、子育て世帯の給付金や、「Go To トラベル」事業の再開などを盛り込み、総額の規模を膨らませた。

 来年夏の参院選をにらみ、生活支援名目の事業などが精査されずに積み上げられた印象だ。

 巨額を投じる狙いについて明確な説明が求められる。効果は厳しく問われなくてはならない。

 「感染拡大防止」「社会経済活動の再開と危機への備え」「『新しい資本主義』の起動」「安全・安心の確保」の4分野からなり、民間投資分などを含めた事業規模は78兆9千億円に上る。

 このうち、保育士や介護職の賃金について月額3%程度に当たる約9千円を引き上げ、全産業平均に比べて低い収入の改善を図る。地域の救急医療を担う看護師や幼稚園教諭の賃上げも実施する。

 こうした施策が民間企業にも波及し、賃上げ機運につながるかどうか、試されよう。

 18歳以下の子どもへの10万円相当給付を盛り込んだが、対象範囲の妥当性や政策効果への疑問は残ったままだ。

 当初の一律支給案から年収960万円の所得制限に変更したが、共働き世帯の場合、夫婦の合計収入が基準を超えても受け取れる。

 給付が消費拡大に結びつくかは見通せず、「ばらまき」批判も免れないだろう。

 巨額の基金を設けているのも気掛かりだ。

 ワクチンの製造拠点整備のほか、人工知能(AI)技術や先端半導体工場の国内立地支援などを基金で対応する。

 基金は数年分の費用を一度に計上でき、支出規模を大きくできる。だが、管理は所管省庁ではなく外郭団体に委ねられ、責任の所在があいまいになる恐れもある。見込み通りの効果をあげられるか、チェックが欠かせない。

 今回の財政支出額は、本年度当初予算の税収に匹敵する。それまで最大だった昨年4月の48兆4千億円の経済対策を上回った。

 裏付けとなる財源は、多くを新たな国債の発行で賄う。

 「国の借金」は今年3月末時点で1216兆円にのぼる。財政健全化は遠のくばかりだ。

 将来を見据え、財源の議論も忘れてはならない。