昇格を果たし、選手と抱き合って喜ぶサンガの曺監督(フクダ電子アリーナ)

昇格を果たし、選手と抱き合って喜ぶサンガの曺監督(フクダ電子アリーナ)

 指導者として過ちを犯し、Jリーグの現場を離れて1年余り。京都市左京区出身の曺貴裁監督(洛北高-早稲田大出)が再スタートを切ったのは、生まれ育った町のプロクラブだった。今季、2011年からJ2であえいでいた京都サンガFCの指揮を執ると、わずか1年でJ1昇格に導き、見事な復活劇を作り上げた。

 曺監督は12年から湘南を率い、豊富な運動量を生かした「湘南スタイル」で3度のJ1昇格などを果たした。しかし19年、自身のパワハラ行為で1年間の公認S級コーチライセンス資格停止処分を受けた。

 「100パーセント間違っていた」。自分自身を見つめ直した。弁護士による研修や、流通経済大サッカー部のコーチに就き、コーチング方法や指導者のあるべき姿を再確認した。

 今季当初は、選手との心の距離に「不安はある」とも明かしていたが、始動日から積極的に向き合った。選手を次々と愛称で呼び、一人一人の心をつかんだ。海外の高いレベルのサッカーを見るよう勧め、意識を高く持たせた。

 一方で繊細なアプローチも忘れない。キャンプで個人面談をして壁を取り除く工夫を重ねた。「失敗とはミスではなく、挑戦しないこと」と呼びかけ、闘争心を引き出した。体制発表の時から「昇格」の二文字はあえて口にせず、日々の練習だけにフォーカスさせた。同い年の長澤徹ヘッドコーチや湘南で同僚だったコーチらスタッフも一丸となってチームを作った。

 リーグ終盤の10月、監督は「(自分が)変わったか…自分では分からない」と首を振った。だが、こうも言った。「今までは、こういうサッカーをしたいからこうしてほしいと言ってきた。でもいろんなタイプの選手がいるので、やり方を貫き通すのは本当にいいのかと考えた。いろんな選手が自分の特徴を出すことで『このチームを支えているんだ』という気持ちになってほしい。やりがいや居心地を感じられるようにしたいと思っている」