4歳年上の姉が統合失調症を発症した時、男性は中学生だった。両親は共働きで、男性が姉の薬の管理や見守りを任された。「ケアをする立場を強いられ、姉と共に過ごす苦痛だけが増えていきました」-。

 病気や障害がある親やきょうだい、家族の介護やケアを日常的に行っている子ども「ヤングケアラー」の姿を伝える書籍「ヤングでは終わらないヤングケアラー」で紹介されているエピソードの一つだ。

 自らもヤングケアラーである京都府出身の木村諭志さんらが先月出版した。こうした当事者の発信などで、ヤングケアラーの実情が少しずつ知られるようになってきた。

 一つのきっかけは、国が今年4月に初めて公表した全国調査だ。

 中学生の17人に1人が家族の世話に追われ、1日7時間以上を費やす生徒が高校生も含めて約1割にもなった。

 大人や専門職が担うようなケア労働に追われ、勉強やスポーツ、友人との交際の時間が削られる。年相応の育ちや教育の機会を失っている深刻な実態が各地から報告されている。

 特にきょうだいを世話するヤングケアラーは、年齢を重ねても同じ状況が続く。

 進学や就職、結婚などのたびに、ケアをしている家族への考慮を迫られる。結婚を考える相手に、世話をしている家族のことを話せない、という人も少なくないという。

 当事者の不安や孤立感を和らげ、ライフステージに合わせた支援やアドバイスを提供する仕組みづくりが求められる。

 政府は来年度から2年間を集中取り組み期間と位置づけ、ヤングケアラーの実態把握に取り組む。

 幼い頃からケアが日常化して声を上げることができない人もいる。そうしたケアラーに支援が届くよう、実効性のある対策を打ち出してほしい。

 深刻な事案に至るケースもある。

 神戸市で2020年10月、認知症の祖母を介護していた20代の女性が祖母を殺害する事件が起きた。女性は裁判で「寝られず限界だった」と陳述したという。

 大津市では今年8月、18歳の少年が当時6歳の妹を暴行死させる事件が起きた。少年は不在がちな母親に代わって家事や妹の世話を担い、ストレスを蓄積していたとされる。

 ヤングケアラーが日常生活も将来の選択も自由にできず、追い詰められてしまったのではないか。

 神戸の事件を機に、同市は福祉局に専門窓口を設置した。鳥取県も児童相談所に新たに相談窓口を設置するなど、ヤングケアラーを早期に発見し、支援につなげる取り組みが始まっている。

 民間では、体験や悩みを話し合う場が京都市をはじめ全国に生まれている。こうした活動を支える仕組みとともに、公的ケアの拡充も必要ではないか。

 家族介護を強調して、若い世代の可能性を閉ざすようなことがあってはならない。