決裁文書の本部長の押印欄。「了」と手書きされ、提出翌日の「9月16日」の日付が記されている(西山さんの弁護団提供)

決裁文書の本部長の押印欄。「了」と手書きされ、提出翌日の「9月16日」の日付が記されている(西山さんの弁護団提供)

 滋賀県東近江市の湖東記念病院での患者死亡を巡る再審で無罪判決(確定)を受けた元看護助手西山美香さん(41)=彦根市=が、国と滋賀県を相手にした国家賠償請求訴訟で、県側の訴訟実務を担う県警が無罪判決を否定する内容の準備書面を提出した際、県警の決裁文書に滝澤依子県警本部長(当時)の押印がなかったことが24日、西山さんの弁護団の情報公開請求で分かった。弁護団長の井戸謙一弁護士は「本部長の決裁を取らず提出したのなら組織の体(てい)をなしていない」と批判している。

 県警は9月15日、「被害者を心肺停止状態に陥らせたのは原告(西山さん)である」と、西山さんを犯人視する記述が含まれた準備書面を大津地裁に提出した。原告側の反発を受け、滝澤本部長は28日、県議会本会議で「書面の表現に不十分な点があり、西山さんをはじめ関係者の心情を害し、おわび申し上げる」と謝罪した。県警は10月5日、7カ所を訂正する申立書を提出した。

 本部長は記者会見で「訴訟の推移や対応方針について随時報告を受けていた」としたが、提出前に準備書面の内容を知っていたのかなど、作成過程の説明は避けていた。

 弁護団は9月22日、県警などに決裁文書を公開するよう請求し、県警は11月8日付で一部を公開。文書によると、本部長の決裁欄には、準備書面を裁判所に提出した翌日の「9月16日」の日付とともに「了」と手書きされていた。

 弁護団は「本部長は準備書面の詳しい内容を知らず、組織の暴走を事前に止められなかった。本部長の了解がなければ誰の意思で作られた文書ということになるのか」と疑念を口にした。

 一方、県警監察官室は「本部長と警務部長には対応方針について随時報告、相談をし、事前に本部長の了承を得た方針に基づいて、15日までに必要な決裁を受けて提出した。16日に本部長に提出した旨を報告し、担当者が『了』と書いた」と説明した。さらに、「県警の規定では、裁判中の対応については所属長の首席監察官に委任専決されており、押印は所属長まででよかった」とし、問題はなかったとの認識を示した。滝澤本部長が書面を提出前に実際に読んでいたかどうかについては明言を避けた。