宇治川太閤堤跡の復元池で初試行された放ち鵜飼の見学会(京都府宇治市)

宇治川太閤堤跡の復元池で初試行された放ち鵜飼の見学会(京都府宇治市)

 京都府宇治市の市観光協会が、ウに綱をつけず水辺で自由に魚を捕らせる「放ち鵜飼」の来春営業開始に向けた準備を本格化させている。課題だった実施場所は、市が8月に開設した「お茶と宇治のまち歴史公園」内の宇治川太閤堤跡の復元池に決定し、11月下旬には地元小学生を招いて初の見学会を試行した。「放ち鵜飼」が実現すれば全国唯一となるだけに、新たな観光資源として関係者の期待が高まる。

 870平方メートルの復元池で、人工ふ化で育ったウ(愛称ウッティー)5羽は、鵜匠が池に投げ込んだ淡水魚ハスを次々と捕獲。池周囲の板張り遊歩道で莵道小6年の39人が間近で繰り広げられる一挙手一投足に注目した。

 ウッティーは鵜匠から愛称を呼ばれると、岸に戻り、のどにためていた魚を吐かされた。ただ呼びかけに応じなかったり、戻るのに時間がかかったりするケースもあり、鵜匠の沢木万理子さん(47)は「営業開始までに完成度を高めたい」と話した。

 放ち鵜飼の営業にあたり、課題だったのが実施場所。2017年に始めた練習は、鵜匠が綱をつけて操る伝統的な「宇治川の鵜飼」と同様、自然の宇治川で行っていた。しかし綱のないウッティーは遠方に泳いでいきかねず、同協会は昨年末に有識者委員会を設立。8月に受け取った提言書の内容を踏まえ、復元池を場所に決めた。

 「閉鎖的環境で流れがない。水深も約50センチで、ウッティーが泳ぐ様子もお客さんに見えやすい」と、復元池で8月末から同僚と練習を積む沢木さん。「宇治川の鵜飼」は降雨による川の増水でしばしば中止になるが、池は気候に左右される心配も少なく、安定した営業ができそうだという。

 提言書では他に、開催時期について「夏の夜に開催される宇治川の鵜飼と重ならない春と秋」「集客しやすい土日・祝日」を求め、小中学校の見学などには平日対応も必要とも指摘した。

 今後は、営業の具体的な形態を詰める段階に入る。観覧席設置の有無や、鵜匠の説明を聞きやすいレシーバーイヤホンの貸与、鵜匠との交流の機会などで、莵道小児童の見学会も子どもの意見を聞く一環。年内には旅行会社スタッフらも計5回招待し、ツアー商品の成否や見せ方の判断に生かしていく。

 放ち鵜飼は島根県で2001年まで行われていたことがあり、「一度途絶えた方法が宇治で再生される意義は大きい」と語るのは、東京大大学院教授の宮城俊作・有識者委員会委員長。昼間の開催となり、子どもを連れた家族にも楽しんでもらいやすい。松村淳子市長は「新しい宇治観光のスタートになり得る」と期待する。

■放ち鵜飼

 鵜飼は全国11カ所で行われているが、捕獲した野生のウに綱をつけて操るのが基本だ。放ち鵜飼は綱を使わない珍しい手法で、島根県の高津川で2001年に途絶えた。高津川では熟練した鵜匠が野生のウを手なづけていたが、宇治の場合は、人工ふ化で育って鵜匠を親と思うウッティーたちの習性を生かす。

 ウは神経質で人の飼育下で卵を産まないとされていたが、「宇治川の鵜飼」用の小屋で2014年、野生のつがいが卵を産んだ。鵜匠らは人工ふ化にも日本で初めて成功。その後も次々と成功して11羽に増えている。