京都市の保育園入園に関する関係書類の一つ。来年度の保育料の明記がなく、入所を希望の保護者に戸惑いが広がった

京都市の保育園入園に関する関係書類の一つ。来年度の保育料の明記がなく、入所を希望の保護者に戸惑いが広がった

保育料値上げの先送りについて記者団に見解を語る門川市長(昨年11月30日、京都市中京区・市役所)

保育料値上げの先送りについて記者団に見解を語る門川市長(昨年11月30日、京都市中京区・市役所)

 京都市が、2022年4月の保育料の値上げを見送った。財政難を理由に改定を進めようとした市の姿勢に、多くの市民から批判が上がり、そうした声がひとまず実った形だ。ただ値上げ方針は撤回されておらず、保護者団体からは「料金を決める過程に、子育て世帯の声を反映させて」との要望も上がる。

 市の行財政改革計画は「国基準を基本に改定を行う」と記し、国基準まで引き上げた場合、月額1万円以上の値上げになる世帯も想定される。昨年6~7月に行われた計画案への意見公募には保育料に関する504件の意見が寄せられ、「子育て環境日本一と提唱しながら、改定は短絡的」「未来に生きる子どもを育てることを考えていない」などと大半が値上げ反対だった。

 2人の子どもが保育園に通う父親(30)も意見を届けた1人。「保護者会でもこの問題に熱心に取り組んでいたので、まずは良かった。もし声を上げていなかったら値上げを強行したのでは」とみる。その上で、「今でも保育料は高く、コロナ禍で苦しい家庭が増えているのに、財政難の危機感をあおって値上げするのは納得いかない」と語る。

 説明不足への批判も高まっていた。昨年10月に来春の保育園入園の申し込みが始まったにもかかわらず、関係書類に具体的な改定料金は明記されなかった。それでもなお、市は値上げ幅や時期を「検討中」と繰り返した。

 今春から長男が保育園に通う予定の母親(37)は「金額が分からない中での申し込みは、普通の商品や企業だったらありえないこと。今後もどうなるのか不透明で、値上げに至る経緯や理由を誰でも分かるように説明してほしい」と求める。保護者に広がる戸惑いに、市議会与党内でも批判の声が上がり始めた。

 門川大作市長は昨年11月30日、市議会で見送りを表明。議会後、子育て支援やコロナ禍の状況への配慮などを理由に挙げたが、「(値上げは)引き続き検討する」と述べた。保護者から多数の反対意見が寄せられたことに対しても、担当課は「いろんな声は聞いているが、今回の見送りに直接影響はしていない」とし、22年度中の値上げも否定していない。

 市保育園保護者会連合協議会の田中智子会長は、会の調査で現在の保育料にも保護者の8割以上が負担感を示していると指摘。値上げの影響は子育て世帯だけでなく、人口減などで市民生活全体にも及ぶとし、「出生数がどれくらい減るのか、どれほどの子育て世帯が市外に流出するかなど、市が影響をきちんと調査し、値上げの根拠を示すべき。保育料を決める過程に、子育て世帯の声を反映させる仕組みも必要だ」と訴える。