「絶景かな、絶景かな」―。京・南禅寺の楼[さん]門(三門)から満開の桜を眺め、石川五右衛門が悠々と放つ名せりふ。亡くなった中村吉右衛門さんの最後の舞台は、今年3月の「楼門五三桐[さんもんごさんのきり]」(東京・歌舞伎座)だった。声、顔、姿と三拍子そろう名優。京都でも顔見世で親しまれ、名作と名高い時代劇「鬼平犯科帳」を太秦の松竹撮影所で撮るなど縁が深く、「第二の故郷のよう」と語っていた。今年の顔見世が始まるのに合わせたかのように旅立った。