春の新卒一括採用に偏り過ぎている慣行から脱却し、多様な方式による採用への移行が必要-。

 経団連が採用と教育の在り方を大学と話し合う産学協議会で、そんな報告をまとめた。

 IT企業などで目立つ通年採用を拡大する方針という。横並びの一括採用は年功序列や終身雇用といった日本型慣行と表裏一体の関係にあり、雇用環境を大きく変えていく可能性がある提案だ。

 学生や企業の選択肢が増えることは歓迎したいが、採用を通年にすることに伴う問題点もよく吟味する必要があろう。それらに目配りしつつ、バランスのとれた方法でより良い学業、雇用環境にしていくことが大事だ。

 経団連はこれまで、4月一括採用に合わせて会社説明会や面接などの解禁日を決めた「就活ルール」を定め、大企業に順守を求めてきた。

 だが、留学生が海外から夏ごろに帰国しても大企業の採用活動が終わっているなど、一括採用の手法が時代に合わない面もある。そうした弊害を通年採用の拡大で解消しようというわけだ。

 いつでも応募でき、入社日も自由な通年採用が広がれば、学生は学業に合わせて就職活動の時期を自由に選べ、企業をじっくりと選ぶ時間ができる。

 企業にとっても多様で有能な人材を採用しやすくなる。欧米では通年採用が一般的で、国境を越えた人材獲得がやりやすくなるメリットもあろう。

 半面、通年採用が広がれば、新卒の採用活動が一層前倒しされる懸念もあり、そうなれば逆に学業に悪影響を及ぼしかねない。優秀な学生が大企業に集まる傾向が強まり、中小企業にしわ寄せが及ぶ恐れも出てこよう。

 加えて採用にかかわる企業の負担も増え、体力のない中小は経営の重荷になりかねない。

 現在の就活ルールは、外資系企業などが無関係に採用活動をしていることもあり、経団連は2020年春入社を最後にルールを廃止する方針だ。

 その後は政府主導でルールを決めるが、無秩序になっては学生が混乱するだけだろう。多様な採用形態へスムーズに移行するには実効性のある新たなルールづくりが欠かせない。

 通年採用が増えれば、新卒時に正社員になれなかった人や転職を目指す人にも門戸が広がる可能性が出てくる。負の側面にも十分に留意し、就活する人の立場に立った丁寧な議論を進めてほしい。