叡山学寮の施設として使われていた比叡山の本覚院(大津市・延暦寺)

叡山学寮の施設として使われていた比叡山の本覚院(大津市・延暦寺)

 仏教とは無縁ながらも僧侶を志す若者を全国から公募し、指導する教育機関として知られた天台宗の「叡山学寮」が廃止された。1995年、同宗総本山・延暦寺(大津市)に創設され、当時は「宗門に新風を吹き込む」と内外から注目された。しかし、社会情勢の変化のなかで14年間の休寮を経て幕を閉じた。

 仏教に関する知識はなくても信仰への意欲や人柄を重視して入寮者を選抜した後、2年間こもって教学や勤行について学ぶ場として開設された。僧侶の世襲化が進み宗門が閉鎖的になることを避ける目的で、仏教とは無縁の若者に着目した取り組みは当時、大きな注目を集めた。初年度は定員いっぱいの5人が入寮。僧侶資格を取得した後は、さらに修行を重ねたり末寺の住職となったりするなど本人の意思に基づく進路選択がなされてきた。
 だが、学寮が開設されていた時期はバブル崩壊後の就職氷河期とも重なり、志願者の中には就職先の一つとして僧侶を志した人もいたとみられる。毎年一定数の志願者はいた一方で宗派が求める人材との差が大きかったといい、育成の方法を一から見直そうと、2005年度は募集を休止した。再開を目指して宗会議員や延暦寺僧侶も交えた「叡山学寮運営協議委員会」で検討を続けてきたが、有効な方法を見いだすことは困難と判断し、今年8月下旬に廃止されたという。
 同派の森田源真教学部長は「経済不況など社会情勢が大きく変化し、信仰に対する考え方も想像以上に大きく変わった」と話す。そのうえで「修了生15人の中には現在、(『静の荒行』と呼ばれる)十二年籠山行(ろうざんぎょう)に挑む僧侶もいるなど、一定の役割は果たしてきたと思う」と述べた。