患者の予期せぬ死亡を対象とする「医療事故調査制度」がスタートして3年半が過ぎた。

 医療機関が第三者機関へ届け出て院内調査を行い、原因を究明する仕組みだ。その結果を遺族に説明することも法律で義務づけられている。

 運営する日本医療安全調査機構によると、「調査が必要」と届け出のあったのは制度が始まった2015年10月~今年3月末で計1308件。医療側が想定外の死亡事例に向き合うプロセスが定着しつつあると言える。

 だが、年間の届け出は初年の388件をピークに300件台で推移し、当初見込んだ年間千~2千件を大きく下回る状況が続く。先細りも懸念され、制度の周知と改善が求められる。

 「医療事故イコール医療過誤」と捉え、訴訟リスクを懸念する医師は多い。ただ制度の目的は医療界全体で問題点を共有し、再発防止を図ることだ。関係者はこのことを十分理解してもらいたい。

 届け出の低調な要因の一つは、調査対象の基準があいまいで明確化されていないことだ。厚生労働省は、できる限り具体的に対象事例を示す必要がある。

 最優先で調査しないといけないのは、医療ミスの可能性が否定できない場合だ。再発防止が急がれるからだ。

 だが、届け出や調査実施の判断は医療機関に委ねられている。このため「調査してもらえない」「説明に納得できない」と現状に不満をもつ遺族も少なくない。

 患者側の要望に全て応じるのはマンパワーの面からも難しいが、医師や病院側の説明を踏まえて第三者機関が必要と判断した場合など一定の条件を満たせば調査を義務づけるよう見直してはどうか。

 届け出対象を死亡以外にも広げて重い障害が残った事例を含めることや、必要な届け出を怠った際の罰則規定も検討課題だ。

 1999年以降に重大事故が相次ぎ、国民の間に医療不信が高まったことが制度創設のきっかけだ。医療関係者からも「むちゃな治療の歯止めになっている」「安全への意識が高まっている」と一定の評価がある。

 医療事故は各地で後を絶たず、現行制度を巡っては改善を求める署名活動も展開されている。医療関係者はこれらの声に真摯(しんし)に応え、調査充実に努める必要がある。厚労省は制度の課題を検証すべきだ。公正で国民に信頼される仕組みに発展させるためにも社会全体で議論を深めていきたい。