京に育って旧制三高で学び、昨秋に90歳で亡くなった雪氷物理学者の樋口敬二さんが独特の見立てを披露している。いわく<氷河は、企業のようなものである>▼降り積もった雪は氷となって氷河を形成し、最後は解けて水になる。その氷河が拡大や縮小するメカニズムを企業収支になぞらえた(「氷河への旅」)▼こちらの氷河も企業との因縁は深い。バブル経済崩壊後、企業が新規採用を手控えた結果から非正規社員として働く人が多い「就職氷河期世代」である▼政府は今月の経済財政諮問会議で30代半ば~40代半ばにあたるこの世代への就職支援強化を打ち出した。今後3年間の「集中プログラム」を夏までにまとめるという▼支援の提言者には中西宏明経団連会長も名を連ねる。名だたる大企業を束ねる「財界総理」は会議で「就職氷河期という捉え方を実は企業はあまり今までしていなかった」と吐露している。率直な物言いに接し、遅きに失したとの感を強くする▼この世代は「ロスト(失われた)ジェネレーション」とも呼ばれる。中には社会に出る際のつまずきからひきこもり状態になった人も多く、抱え続けてきた喪失感は計り知れない。氷河のような遅々とした動きではなく、対策を加速化させ、この喪失感を一刻も早く氷解させてほしい。