講習会で、機器を使って判断能力などを測る参加者(京丹波町豊田)

講習会で、機器を使って判断能力などを測る参加者(京丹波町豊田)

 4月に東京・池袋で乗用車が暴走し母子2人が死亡した事故が起こるなど、近年、高齢ドライバーの危険運転が問題視され、運転免許証の自主返納に向けた動きが加速している。一方で、京都府南丹市や京丹波町など口丹波地域では車が生活に欠かせず、返納するかしないか葛藤している人も少なくない。高齢者の運転事情を探った。

 約60年間、車に乗っていた男性(91)=京丹波町上大久保=は3月、運転免許の更新日を機に南丹署で返納した。男性は「目や足の調子が良くなく運動神経が鈍っていると感じていた。だが、不便になるので返納はずっと迷っていた」と打ち明ける。高齢者の事故の多発を受け、駐在所の警察官の説得もあり、返納に踏み切った。今は「シニアカー」と呼ばれる電動車いすやバスを使って外出している。

 警察庁のデータによると、2018年の全国での65歳以上の運転免許返納者数は40万6千人と増加傾向にある。南丹署管内では今年5月は31人で、昨年同時期比で17人増えた。

 13日、京丹波町の豊田区集会所であった講習会。高齢者が運転中の判断力などの機能を測れるように、南丹署が管内各地で開いている。機器のランプがともった瞬間に同じ色のマットを踏み、反応するまでにどれだけ時間がかかるかを確認する。年齢を重ねるにつれ反応が遅くなる傾向にあり「大丈夫だろうか」と不安を漏らす参加者の姿も。ブレーキとアクセルの踏み間違いも懸念された。

 70歳以上の人が免許を更新するためには高齢者講習が義務付けられている。講習では、指導員が同席する運転検査や、機器を使った動体視力や視野の機能検査を行う。75歳以上は16種類のイラストを覚えて質問に答えるなど認知機能の検査も受けなければならない。

 講習を行う園部安全自動車学校の管理者、中川正史さん(60)は「講習で自分の能力を確認することで事故の怖さを再認識することが大切で、安全運転を心掛けてほしい」と訴える。

 口丹波は車社会だけに、不安を抱えながら乗用車に乗り続ける住民もいる。農業の男性(77)=京丹波町豊田=は「自由に動き回ることができる車は生活必需品」と語り、仕事も日常生活も車に頼る現状だ。「免許がなくなったら足を奪われることと同じ。免許を返納しても便利に暮らせる環境を整えてほしい」と望んでいる。

 免許返納者に向けた行政の対応も少しずつ進む。支援事業として、南丹市は70歳以上にタクシーやバスに1万円分乗れる券を、京丹波町は65歳以上に町営バス全路線とJRバス園福線の1万円チケットを、それぞれ支給している。南丹市は八木、日吉、美山間を走るデマンド・バスで、京丹波町は買い物支援バスなどで住民の足を確保しており、ニーズが伸びそうだ。政府は高齢者向けの限定条件付き免許制度の創設を検討している。

 同署の小林建太交通課長は「車が生活を支えているのは確かだ。しかし、運転に少しでも不安を感じたら、大きな事故につながる前に家族や警察に相談してほしい」と呼び掛ける。高齢者の運転事故を防ぐために、当事者だけでなく社会全体で対策しなければならない時に来ている。