ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、ロシア極東ウラジオストクで初の首脳会談を行った。

 朝鮮半島問題の調整やロ朝関係強化などに取り組むことで一致した。会談では固く握手し、結束をアピールした。

 両首脳は今回の会談を機に信頼関係を構築したようだが、非核化への具体的な成果につながるかは見通せない。初会談に至った背景にある両首脳の思惑や事情を見極める必要がある。

 2月の米朝首脳会談決裂を受け、一方的な核放棄には応じられない立場の金氏がロシアの支持を取り付け、対米交渉の後ろ盾にしたかったのは間違いない。

 米との交渉は暗礁に乗り上げ、経済制裁解除の見通しも立っていない。頼みとする中国は米中貿易摩擦への対応優先で支援に動かず、もう一つの大国ロシアの懐に飛び込まざるをえない状況まで追い込まれていたと言える。

 一方、プーチン氏は北朝鮮の核実験停止や核実験場廃棄などの決断を評価し「制裁を緩和すべき」と主張している。経済的実利を追求し、朝鮮半島情勢への影響力を示す狙いがあるとみられている。

 近年の経済制裁で貿易は制限されているが、北朝鮮ではロシア産の石油製品などが出回っている。北朝鮮、韓国を結ぶガスパイプラインや鉄道敷設計画も構想レベルにとどまっており、ロシアとしては将来の利権獲得に布石を打つ思惑も透ける。

 極東の経済を支えてきた北朝鮮労働者は、国連の制裁決議で年内までの本国送還などが義務付けられており、制裁見直しはロシアにとっても喫緊の課題だ。

 ロシアと中国の間には2017年に合意した行程表がある。まず北朝鮮の核・ミサイル開発と、米韓の大規模な軍事演習を凍結し、朝鮮半島の緊張を緩和するよう提唱している。将来の多国間協議の必要性も強調している。

 その枠組みとして日本を含む6カ国協議があったが、今回の会談によって同協議参加国の首脳のうち金氏と会っていないのは安倍晋三首相1人となった。北朝鮮を巡り日本だけが「蚊帳の外」に置かれる印象もぬぐえない。

 ロ朝の結束が強まることで日本の北朝鮮への対応に悪影響を及ぼさないか気がかりだ。平和条約交渉を巡り、ロシアへの態度を軟化すれば北朝鮮を突き崩しにくくなるジレンマもある。日本は独自のアプローチが必要ではないか。外交戦略の練り直しが迫られよう。