原子力規制委員会が、原発に義務付けたテロ対策施設の設置期限を延長しない方針を決めた。

 「特定重大事故等対処施設」(特重施設)という。原発に航空機を衝突させるなどのテロ行為が発生した場合に、遠隔操作で原子炉の冷却を続ける設備などを備える施設である。

 東京電力福島第1原発事故後、新規制基準で整備することになったが、再稼働した電力3社が「完成が遅れる」として期限の延長を求めていた。

 独立した立場で安全を追求する規制当局として、電力側の主張を拒否したのは当然の対応だ。

 受け入れれば、何のための規制委かと批判は必至だったろう。そもそも期限は一度延長されており、電力側も「甘え」が過ぎる。

 完成は約1~2年半遅れる見通しだ。再稼働済みを含めた5原発10基が次々と停止を迫られる可能性がある。

 現在停止中の関電高浜1、2号機のうち、1号機は2020年6月にも再稼働の見込みだが、特重施設は期限の21年6月から約2年半完成が遅れるという。その間は停止しなければならない。

 各社は運転継続で利益を確保する意図だったとみられる。だが、本来は再稼働の前に整備すべきではなかったか。安全軽視のツケが回ったと言わざるを得ない。

 経営に打撃となり、電気料金の上昇につながらないか心配だ。原発のコストは安くないことを改めて認識する必要がある。

 規制委は厳格な姿勢を貫くべきだ。今後、各社の事情を個別に考慮して延長を認めるようなことになってはならない。

 特重施設は緊急時制御室を設け、予備の電源や冷却ポンプなどを備える。建屋を新設する必要があり、当初から大がかりな工事が想定されていた。

 13年の新基準施行から5年以内が設置期限だったが、再稼働に向けた安全審査が長引き、原発本体の工事計画の認可後から5年以内と延長された。

 電力各社は今になって「工事の見通しが甘かった」と再延長を求めたが、そんな理由を持ち出すこと自体が厳しさを欠いている。

 原子炉を停止しても、根本的な解決にはならないことにも留意したい。使用済み燃料プールに核燃料があり、テロ攻撃を受けるリスクは変わらないからだ。

 安全を守るにはあらゆる面から実効性のある対策が求められる。政府は改めて原発推進の困難さに向き合うべきだ。