〈鯉幟(こいのぼり)風に折れ又(また)風に伸ぶ〉山口誓子|職場の窓から望む公園で、こいのぼりが薫風に泳いでいる。端午の節句が近いが昨今、都会ではあまり見かけない。マンション住まいが増え、生活様式が変わったのに加え、少子化の影響が大きいのだろう▼昨年の出生数は92万人と1899年の統計開始以降最少で、3年連続で100万人を割り込んだ。少子化に歯止めがかからないのが悩ましい▼こいのぼりの誕生は江戸中期。武家が男児の出生を祝って庭先などにのぼりを立てたのにならい、庶民も中国の故事「登竜門」にちなむコイの形にしたのが始まりという(日本鯉のぼり協会編「鯉のぼり図鑑」)▼おおきいまごいはおとうさん…昭和初期の童謡「こいのぼり」にお母さんコイの姿はない。父親が大黒柱だった時代背景がうかがえるが、現代は黒い真鯉が父、赤い緋(ひ)鯉は母、子どもは青や緑、ピンクと、色鮮やかなコイ一家だ▼1934年には皇居でも揚げられ、天皇陛下の初節句を祝ったものの、戦時中は厳しく制限されたとか。まさに時代が映る▼愛児の成長後、掲げなくなったこいのぼりを持ち寄って、川辺などで勇壮に吹き流す催しが最近、京滋各地で初夏の風物詩となっている。庶民文化を継承し、地域挙げて子らの成長を願う心意気がうれしい。