判決後、報道陣に心境を吐露する両親(21日午後5時48分、大津市の大津地裁前)

判決後、報道陣に心境を吐露する両親(21日午後5時48分、大津市の大津地裁前)

心誠君の最後の日記。「あしたはもっと楽しくなるといいです」と記されている。事故後、添削のメッセージも書き加えられた(2019年秋撮影)

心誠君の最後の日記。「あしたはもっと楽しくなるといいです」と記されている。事故後、添削のメッセージも書き加えられた(2019年秋撮影)

大津地方裁判所

大津地方裁判所

 滋賀県大津市の国道161号で2019年、飲酒運転でワゴン車に衝突し小学4年の男児を死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)などの罪に問われた京都市伏見区の会社員の男(42)の判決公判が21日、大津地裁で開かれた。大西直樹裁判長は危険運転致死罪の成立を認め、懲役4年(求刑懲役6年)を言い渡した。

■危険運転罪の成立が焦点だった

 判決によると、被告は2019年5月5日午前0時50分ごろ、大津市北比良で飲酒した上ワゴン車を運転し、対向車線を逆走。対向の富山県の男性(48)のワゴン車に衝突し、後部座席の小学4年の次男=当時(9)=を死亡させた。

 裁判は危険運転致死罪が成立するかが争点だった。検察は「事故直前に反対車線を逆走するなどしており、アルコールの影響で正常な運転が困難だったことは明らか」と主張した。

 弁護側は、飲酒の事実は認めた上で「睡眠不足の状態で走行し、居眠りした可能性を否定できない」とし、過失運転致死罪と道交法違反(酒気帯び)の罪にとどまると主張していた。

 判決は、事故直前の逆走は居眠りではなく、覚醒状態で起こったと判断。また、事故後に行われた呼気検査から、事故時のアルコール保有量を逆算し、飲酒の影響で対向車線を逆走する危険な運転をしたとして、危険運転致死罪を適用した。

■変遷した被告の「飲酒量」、つのる憤り

 亡くなった男児の名は、心誠(しんせい)君。「うそのない、誠の心を持つ人に」と願って命名された。

 心誠君の両親と兄は、2020年5月の初公判以来、被害者参加制度を活用して公判に加わり、無念の思いを法廷で訴えてきた。しかし、1年7カ月に及ぶ裁判は、苦しく、つらいものだった。

 事故から3日後、被告は富山県まで謝罪に来た。そのとき、被告は飲酒運転の事実を明かさなかった。一方、滋賀県警の調べには「生中(生ビールの中ジョッキ)2、3杯と、ウイスキー3杯を飲んだ」と供述していた。

 公判で被告は、飲酒量を警察での供述より少ない量に変遷させた。「信用できない。遺族を欺き、屈辱的だ」。やり場のない怒りが募り、公判のたびに疲れが噴き出した。

■「大人にしてやれんでごめんね」両親と兄、悲痛な訴え

 2021年11月、母親は意見陳述に臨んだ。「もしも時間が戻るなら、大好きな食べ物をたくさん用意して、ふかふかの布団で昔みたいに家族5人で寝て…」「お母さん、心誠の夢を叶えるお手伝いしたかった。大人にしてやれんでごめんね」などと愛息への思いを語り、「子どもの骨を拾う絶望、あなたにわかりますか」と涙を流して訴えた。

 父親と大学生の兄も意見陳述し、被告の供述が変遷したことや、飲酒運転をしたことなどに強い怒りをあらわにし、被告に厳罰を求めた。

 被告は意見陳述を聞き、「重大な事故を起こし申し訳ない。2年半の間、自分の行いを忘れることはなかった」と謝罪した。

■最後の日記「あしたはもっと楽しくなるといいです」

 心誠君は、ルールをきちんと守る、優しい子だった。富山から親戚宅がある福井県まで車を運転した父親に「疲れてない?」と気遣ったことがあった。

 地元特産のチューリップが好きで、母親のために内緒で植え、驚かせようとしたこともあった。事故前には、自分で選んで植えた富山特産の品種「いちごスター」の赤い花が咲き始めていた。