Photo by 八木夕菜

 

 御食国若狭と京を結ぶ鯖街道。じっくりと育まれたその風土を感じ、1000年先を想い料理する。 

 

Chapter.3  金時人参

a.力強い毛根

 福井県・小浜から若狭街道を抜け、京都市に入ってすぐ。市街地までもう残り20~30分程の距離ながら、比叡山麓の谷間に位置する大原は寒暖差が激しく、日の出の時間には朝霧が立ち込めます。その朝霧が野菜を美味しくさせると言われていますが、大原地区を一望できる丘に位置する「パープルファーム藤岡」の畑には金時人参が元気に育っていました。
 12月中旬に差し掛かるタイミングで今季の初収穫。太い頭と元気な葉が土から顔を出して待っていました。力を入れて抜こうとしても土から栄養を吸収するために力強く張った毛根がしっかり土を掴み、簡単には離れようとしません。それで気合を入れなおしてグッと引き抜くと「ブチブチ!」と土から毛根が離れる音が鳴るのです。そうして抜いた今年初の金時人参は綺麗な色をしていて、見るからに美味しそうでした。

 京野菜を代表する金時人参。丸焼きにすれば芋のような甘味が出ますが、初収穫の太い人参に出会えたので、今回はちょっと思い切った料理にしたいと思いました。

Text by 中東篤志

   ×  ×  ×
 御食国(みけつくに)-。古来、天皇が食される海産物などの食物を納めた国を示し、万葉集には、伊勢・志摩・淡路などが御食国として詠われ、奈良時代の木簡や平安時代の「延喜式」からは、若狭が「御贄(みにえ)」を納める国であったことがうかがえる。

中東篤志(なかひがし・あつし) 京都市出身。料理人一家に生まれ、12歳から父のもとで料理を学び始める。高校卒業後、バス・フィッシングのプロを目指して渡米。23歳から料理の道に戻り、ニューヨークの精進料理店で副料理長兼GMを務めた。日本で育まれる飲食文化の海外発信のため、カリナリーディレクターとしてOne Rice One Soup Inc.を設立。ニューヨークと京都を拠点に日本食のイベント企画や飲食店のプロデュース、運営、食からの地域創生事業などを手がけている